2012年3月13日火曜日

グレイヴディッガー(角川書店)

著者:高野和明 出版社:角川書店 発行年:2012年(文庫版) 本体価格:667円
 「ジェノサイド」がすさまじい勢いで売れているなか、単行本でヒットを飛ばした作品が文庫本で登場。主人公は、チンケな犯罪歴をもつ八神。しかし骨髄ドナーとなって名前もしらない「誰か」を救うためにとある病院をめざそうとしていた。そこで知り合いが思いもかけない死をとげる。そして別の事件をおいかける監察係の剣崎と古寺巡査長。
 超人的な身体能力をもつわけでもなく、またとてつもない知性をもっているわけでもない。パソコンの操作もできない犯罪者が、ただひたすら骨髄を提供するべく逃げ回る。そしてじりじりと目的地に近づこうとする様が面白い。映画「ザ・ロック」(ニコラス・ケイジ主演)もFBIの化学捜査班研究員でアクションはまるでダメ…というのがかえってサスペンスをあおっていたが、この小説もまるでダメダメだが動物的本能で危機を回避していくというリアリティのある様が面白い。夜中に読み始めて途中でやめるつもりが一気にラストまで読み終わってしまう。娯楽作品ではあるのだけれど、「観察力」と瞬時の判断。そして「根性」がサバイバルには大事なのだなとしみじみ納得。で、この3つの能力、普通の人間でも集中力さえあればけっして無理なことではないというのが味噌。

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