2012年3月19日月曜日

日本の1/2革命(集英社)

著者:池上彰 佐藤賢一 出版社:集英社 発行年:2011年 本体価格:760円 評価:☆☆☆☆☆
 佐藤賢一がまずフランス革命を前半と後半にわけ、前半は人権宣言など一種の「公約」を起草し、着地点としても立憲王制度などマイルドな着地点が目指されていたのに対して、1792年以後から王制打倒といった過激な「革命」が進行していったと指摘する。これがタイトルにもなっているわけだ。2分の1とはたとえばそうした将軍の死刑などは絶対におこなわなかった明治維新や自由民主党から民主党への政権移動など、微温的に進行していく日本の「革新」のことをさす。それがいい悪いというよりも少なくともフランス人がフランス革命に対してもつ「うしろめたさ」みたいなものは背負わなくても住むようになったという指摘は大きい。フランス革命については一部は日本国憲法など日米に流れ、もう片方の「粛清」的な暗い部分はソビエト連邦など東欧や北朝鮮などに流れていった。功罪両方含む近代の大事件だからこそ「ベルサイユのばら」も含め、さまざまなテーマでたびたび取り上げられるのだろう。ひと昔まえにはフランス革命バンザイというトーンだったが、1792年以降の粛清政治の歴史からすると現時点では必ずしもフランス革命のすべてが肯定されているわけではないことがわかる。そして巻末に池上彰が書いているが、歴史を学ぶことによって人間を学ぶことができるという指摘も大きい。すでに起こってしまったことだからこそ、また同じような環境になれば再び人間は同じような行動をとる可能性がある。チュニジアなど北アフリカ(その多くはフランスの旧植民地)でもまず旧政権を倒したあとに、ロベスピエールのような独裁政治がしかれないかどうかが懸念される。今またフランス革命の暗い歴史をフィルターにして現在の世界政治を読み解くこともできる。歴史の意義あるいはもっといえば「功利」みたいなことについても教えてくれる新書の名著。

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