2012年3月24日土曜日

ローマはなぜ滅んだか(講談社)

著者:弓削達 出版社:講談社 発行年:1989年 本体価格:740円
 学生時代に読んだ本を読み直し。当時も「読みにくい。しかもわかりにくい」と思った記憶があるが、あれから20年が経過してもやはり「読みにくい。わかりにくい」。しかもタイトルにあるようなローマ帝国の滅亡についての分析が書かれているわけでもない。あらためて現在面白かったといえるのはローマ帝国の物流で、陸上輸送は金がかかるうえにリスクが高く、海上輸送はお金も安く盗賊などのリスクは低かったという点。それと商業は一定程度盛んだったが帝国全体でみればやはり農業の生産力が高かったということ。これが後のベネチア共和国やジェノバなどとローマ帝国の違いになるだろう。非常に文化的には自由奔放で、キリスト教が国教とされるまではさまざまな信仰が許されており、ローマ帝国の繁栄の源はやはり多様性や多元性。そして、ローマ帝国が衰亡したとすれば、それはやはりキリスト教による文化の単一性と、ゲルマン人アレルギーによる文化の許容性がせばまったことではないか。著者も明示こそはしていないが、文化もしくは人種の「許容性」が末期にはきわめて小さな器になっていたことを指摘している。人間の器が「どれだけ自分と違う人間を許容できるか」であるとすると、帝国の器とは「どれだけ文化・人種そして言語が異なる人民を国民としてあるいは市民として認めうるか」ということになるのかもしれない。ローマ帝国は初期もしくは中期にはあったそうした器をどんどん小さくしてしまったようだ。

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