2012年3月12日月曜日

論文をどう書くか(講談社)

著者:佐藤忠男 出版社:講談社 発行年:1980年 本体価格:480円
ポストモダンの映画評論が一世風靡をきわめるなか、佐藤忠男さんの濃色騒然とした映画評論はいまひとつ80年代では人気がなかった。個人的には好きだったが。映画雑誌の投稿欄から評論を書き始め、その後編集者をへて映画評論家にいたる。競争が激しい映画評論でプロとして生き抜いた著者の「文章論」。かなり参考になる。最初は自分自身の「経験」から始まり、その後経験だけでは「行き詰まり」を感じ始め、さてどこにネタをみつけていくべきか…というのが興味深い。近代バンザイから始まった映画評論がそのうち「泣き顔」の回数やらちょっとした疑問点やらから着想を得るにいたる。「なんでもないこと」が実は「宝の山」だと看破するあたりがやはりプロ。また「模倣」から始まる…ということで先輩たちの文章論を研究したあたりがプロ。さらにはモンきりがたの「結論ありき」では論文を書かなかったのもプロのなかのプロ。さらにはさらには短い文章だけではなく結果として駄作であっても「長い文章を書く事」に挑戦したのがそのあとの著者の成功を約束したのだろう。いまはやりの箇条書き式やチャート式の「論文の書き方」ではないものの、「論文」へのヒントはあちこちに散りばめられている。数多の文章論の本に加えていまや絶版になってしまったこの本、amazonでは十分入手可能である。少なくとも2012年3月時点では。

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