2012年3月18日日曜日

ジェノサイド(角川書店)

著者:高野和明 出版社:角川書店 発行年:2011年 本体価格:1800円
 書店で買うにはなかなか手にとりにくいハードカバー。しかも600ページ近い厚さだが、それが気にならないほどの面白さ。時間的・物理的制約条件が明示されたうえで「いかにミッションを達成するか」という「物語」が展開。アメリカ、ワシントン。イラク、バグダット。そして日本の東京。最初はぜんぜん違う地点で始まる物語がその後舞台をコンゴ民主共和国に移して時間が経過していくたびに結びつきを増していく。達成すべき「ミッション」そのものが最初は「謎」とされているが、ストーリーにはさまれる「公開鍵暗証方式」など、数学や薬学にまつわる現時点での「予備知識」が次第にミッションを明らかにしてくれる。ルワンダも副次的に物語に登場するが、フツ族とツチ族との間で抗争が始まり、ツチ族やそのシンパが虐殺された時間は、現代史に記録され、しかもかたちを変えて継続中。アドベンチャー小説というのにとどまらず、現代の国際紛争も物語に取り込んでおり、ベストセラーになるのもうなづける。これずっと読んでいると「イエス・キリストの現代への再来?」というようにも感じる。今から2000年前にパレスチナにあらわれたイエス・キリストは当時の歴史文化からすると「辺境」。この物語のアフリカは紛争中の「辺境」。そして同時代の人間には理解しえない概念を駆使するところや一部の人間が「保護」にたちがるあたりもイエス・キリストの再臨といったイメージがわく。いったん手にとってこの世界にはまったら、ちょっと眠れない。この本、映画化するにも適したストーリーだと思うが、これ日本映画でなくてハリウッドで見たい。主役はトム・ベレンジャーあたりで。

0 件のコメント: