2012年3月20日火曜日

王の逃亡(集英社)

著者:佐藤賢一 出版社:集英社 発行年:2012年 本体価格:495円
 1791年6月。立憲王制度にソフトランディングしようとする勢いがあったこの時期にルイ16世一家が国外逃亡を図りヴァレンヌで「逮捕」される。これ以後、フランス革命は「後期」に入り、暗く陰惨な時代に入っていくことになる。逃亡の原因はいまだ不明ではあるものの、この本を読むと、確かにルイ16世という人であれば自分自身を啓蒙君主と規定し、さらには自分自身の民衆の人気も過信しすぎていた面はあるかもしれないと思う。またフェルセンは「ベルサイユのばら」ではわりとスマートな男性として描写されていたが、この本では地図も読めない「見掛け倒し」という扱いに。こっちのほうがなんとなく説得力があるような。計画がうまくいっていれば国外脱出も可能になっており、その後のジャコバンクラブの独裁政治やテルミドールの反乱、そしてナポレオンの登場なども夢と消えていたかもしれない。この小説フランス革命もこの7巻までは、まだまだ微笑できるシーンがいくつかあった。8巻以降はシャンヌ・ド・マルスの虐殺も取り扱われるという。暗い時代に突入である。

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