2012年3月7日水曜日

シスマの危機(集英社)

著者:佐藤賢一 出版社:集英社 発行年:2012年 本体価格:476円
 フランス革命は1789年からさらに継続して進行中。憲法と宗教との問題で、国民議会は聖職者民事基本法を「可決」。ローマ法王は不快感を示し、国民の総意をかかげるジャコバンクラブとカソリックとの対立が激化。教会大分裂(シスマ)の危機をむかえる。議会制民主主義と王制との妥協点をさぐっていたミラボーはそのさなかに死去。その意思を現実主義者のタレーランと理想主義のロベスピエールに託そうとするが…。これ史実に100%基づいている話ではもちろんない。ただタレーランの恐るべき現実路線とロベスピエールの恐怖政治の「結果」を知る21世紀の読者としては、おそらく「こうした会話があっても確かにおかしくない」と感じるだけの世界観が呈示されている。憲法と宗教の適度な距離感も18世紀フランスの問題であって、さらに21世紀の日本の問題でもある。フランスの場合にはフランク国王クローヴィス、メロヴィング王朝、カロリング王朝とキリスト教、カソリックの影響を多大に受けていただけにその「問題」が先鋭化してあらわれたのだろう。今更ながら綺麗事ばかりではすまなかったフランス革命。まだバスティーユ陥落から「物語」は2年が経過したばかり。ルイ16世はまだテュルイリ宮殿に「軟禁状態」のままで、有名な逃亡事件まであともう少しという「革命の革命の革命」のまだ冒頭の段階でこの面白さ。

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