2012年3月21日水曜日

少年にわが子を殺された親たち(文藝春秋)

著者:黒沼克史 出版社:文藝春秋 発行年:2003年 本体価格:686円
 少年法は2007年に改正され、現在では12歳前後の「少年」であっても少年院送致がありうる制度になっている。ただこの本がもともと執筆されたのは1999年。旧少年法のもとでは、刑法が14歳未満の少年を「刑事未成年者」として取り扱っていたことから、14歳未満の少年の行為は「犯罪」とはみなされず児童福祉法の適用を受けることになっていた。被害者は加害者の両親を含めた民事訴訟をおこして事実関係を確定するより他になかったが、民事訴訟にかっても相手方が自己破産などを申請するば賠償金もとれない。少年法の理念はともかくも、犯罪の被害者やその家族にはやや納得のいかない法体系となっていた。戦後に制定された少年法がそのまま1990年代まで適用され続けたのがひとつの理由だと推定されるが、いわば弱者保護の理念が過剰になりすぎたということではないか。現在はさらに法改正が進んだが、それでも加害者保護に納得がいかない被害者の家族もいるはずだ。犯罪というものが、犯罪者の人生のみならず被害者やその家族の人生も歪めてしまうものだということ。6つの家族の事例を通して著者が丹念にルポをつづっている。

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