2012年2月29日水曜日

大解剖 日本の銀行(平凡社)

著者:津田倫男 出版社:平凡社 発行年:2012年 本体価格:760円
今の銀行の経営スタイルは非常にわかりにくい。ちょっと前までは預金を集めて融資で貸し付けて利ざやを稼ぐ…という教科書どおりの関節金融のスタイルが眼に浮かんだが、どうも最近はそれほど預金獲得には熱を入れていない。といって融資に積極的でもない。で、外貨建預金やら投資信託やらの営業にはかなり積極的ではあるのだが…。ATMで頼みもしないローン機能紹介の画面などがでると即座に拒否ボタンが働くが、いったい何をどうやって利益をあげいるのか。そのヒントはこの新書が与えてくれた。
まず銀行は4つのグループに分けて考えるべきということ。いわゆる三菱UFJ、三井住友、みずほ、りそなの4つのグループと三井住友信託グループだが、アメリカでいう投資銀行業務にいこうとしているグループのようだ。総合金融デパートということで投資信託やら生命保険やらも窓口で販売して銀行業もするけれど利ざやは総合的に稼いでいくというスタイル。2つ目のグループは地方銀行・信用銀行・信用組合で預金で資金を確保して融資か国債を購入して利ざやを稼ぐというスタイル。ただ融資をおこなうにしても国際化の波で海外業務にサービスを上乗せできるのかどうかが今後の課題で、第1の巨大グループに飲み込まれる銀行と地元経済でほそぼそとやっていくグループにさらに細分化されそだ。そしてネット専業銀行だが、決済機能に特化したセブン銀行や融資にもはいっていこうとするイオン銀行などがある。最後に外資系で日本の国内銀行を買収してサービス業として生き抜いていこうとするグループ。著者の分類とは異なる分類だが、おおむね総合金融(投資銀行)、地域金融(商業銀行)、ネット銀行(決済機能重視)という生き方になりそう。ただ金融業にはほかにも生命保険会社や証券会社もあるのだが、総合金融が重視されてくると証券会社や証券会社は巨大グループにさらに飲み込まれていく可能性が高いように感じた。
就職先としてもまた人気のきざしがある銀行だが、昔も今も「安定」(しているようにみえる)「専門的」(なように見えるが日商簿記2級も怪しい銀行員はけっこういる)な「雰囲気」が魅力なのだろうか。この本を読んでも実際に働いている人の話を聞いても何が楽しい職場なのかまったくわからない。2012年時点の今後の金融業界や日本経済新聞の記事をよむさいには非常に役に立つ資料になると思われる。

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