2012年2月29日水曜日

独創は闘いにあり(新潮社)


著者:西澤潤一 出版社:新潮社 発行年:1989年 本体価格:360円
現在廃刊となっているためamazonで入手。半導体デバイス関連の特許や論文をあらわすと同時に大学教授と財団法人の運営もこなした著者。やや過激なものいいではあるが、研究開発と経営のはざまでの苦闘がうかがわれる内容である。原子力発電所の事故が発生した現在では著者のSIサイリスタに関する「光通信ファイバとともに直流送電線をひけば」という発想はきわめて興味深い。またモネの絵画をパリの美術館でさかさまに設置されているのを発見したことから、「観察」の重要性を再認識するというくだりは観察、分析という理系の研究者の基礎を痛感させてくれる。研究開発では機械加工の経験がいきた(51ページ)が面白い。フォードも自動車産業を起こす前には工場の職人をしていたが、実際に手を動かす作業でアナログな「カン」が養われるのかもしれない。少なくとも書籍だけで研究をするよりも実用開発には不可欠な経験ではないかと思う。理系技術者のなかでは相変わらず読まれ続けている名著とされているが、文系職種とされる編集、営業、商品開発、企画といった人にも役に立つ内容だろう。「掃除がなぜ大事か」ということも半導体の工場の特性から「理系的に」解説してくれている。

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