2012年2月24日金曜日

パパラギ(ソフトバンククリエイティブ)

著者:エーリッヒ・ショイルマン 出版社:ソフトバンククリエイティブ 発行年:2009年 本体価格:600円
 名著「大聖堂」を復刊してベストセラーにのせたソフトバンククリエイティブ。この本も立風書房から発行されていた本が廃刊になったのを文庫本で復刊。この歴史的名著が文庫本で読める幸せは、このIT企業からもたらされた書籍。よほど目のきく編集者がソフトバンクにはいるに違いない。
 西サモアの酋長ツイアビがサモア語で主に欧米人をさしていった言葉が「パパラギ」。ポリネシアの自分の周囲の人に向かって考えた一種の欧米文化の批判がこの本で、初版は1920年。今から90年前の本ということになるが、一種の欧米文化への批判は現在の日本への批判でもある。けっして文明や文化を否定するわけではない…というよりも自分自身は明らかに都会でしか暮らせないタイプなのだが、それでも毎日の時間のなかでほんの少し立ち止まって考える時間が必要なことぐらいは認識している。そしてその触媒になるのが、この90年前の西サモアの酋長の言葉だ。「大いなる心」とツイアビがよぶ「神」(?)は一種のアニミズムに近いものともいえる。だが自然に身をまかせて生きるその精神が、文明にひたりきった自分には鋭い批判として突き刺さる。大方の人間は生まれ育った土地で、生まれ育った文化にひたって人生をおえる。ただその間に少したちどまって考えてみよう…というときに遠く時空をはなれたツイアビの言葉は、いい刺激になるに違いない。

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