2012年2月28日火曜日

凡人が一流になるルール(PHP新書)

著あーと者:斎藤孝 出版社:PHP研究所 発行年:2009年 本体価格:720円
 レジに持っていくには若干気はずかしいタイトルだが、中身はエジソン、カーネギー、渋沢栄一、豊田佐吉、小林一三、フォードといった人々の努力と苦労の歴史である。伝記の読み方を伝授されているという見方もできるし、わりと同世代にこうした偉人が出現していたことにもきづく。個人的には小林一三と豊田佐吉の伝記が興味深い。豊田佐吉はやはり技術者もしくは開発者であって、経営にはあまり興味関心がなかったようではある。会社を創業するまではほかの経営陣との意見の対立などもあったようだ。発明もしくは改良でもいいのだが、そうした工夫と改善がなければ日々の仕事がつまらないであろうという著者の見立ても興味深い。いずれも「ちょっと無理かな」という目標を立案して最初は地味な改良からスタートしている。豊田佐吉は飛び杼の発明で有名だが、その技術を1929年に英国とプラット社と共同開発しているのもこの本の153ページで初めて知った。さらに織物から紡績業に上流統合していって、、それが第一次世界大戦の糸の高騰となり開発資金を稼いだというのも興味深い。とはいえ自動機織り機の開発が主眼だった豊田佐吉は資金を機械装置の開発に振り向けたようだが、こうした開発者魂が紡績業への上流統合にも結びついたというのも、技術者出身の経営者が最近注目されていることと無縁ではないだろう。カーネギーも機械工出身で、フォードも車両工場で働いていたし、技術者あるいはモノづくりの現場から生まれてくるシーズからニーズを汲み取るといったプロセスは19世紀から20世紀にかけてすでにひとつの確立されたルートだったようだ。やや「教訓」を箇条書きにしているところが、かえってハナにつくという読者もいるかもしれないが、電車の中などでパラパラ読むのには便利な新書。

0 件のコメント: