2012年2月22日水曜日

物語で読み解くデリバティブ入門(日本経済新聞出版社)

著者:森平爽一郎 出版社:日本経済新聞出版社 発行年:2011年 本体価格:762円
 デリバティブの難しい仕組みまでは理解が必要な場面はそうそうない。ただ簡単な仕組みは知っておくとなにかと便利。たとえばミクロ経済学の本を読むときとか時価会計の本を読むときなどに。
 けっしてこの本も簡単な内容ではないのだけれど、オプション取引については生命保険などを例にとって非常に詳しくわかりやすく解説されている。タイトルのわりにはスワップや先物取引についてはさらっと書かれているがオプション取引が理解できれば、先物取引もそう難しくはないかもしれない。買う権利もしくは売る権利の売買などとよく説明されるが、そもそも権利を購入する、あるいは権利を売却するという取引自体のイメージが難しい。生命保険であれば、死亡したときに自分の命を所定の金額で売る権利を保険の加入者は購入した…と考えるとじゃっかん理解が早くなる。実際に死亡したときに生命保険に手続きをしなければ、権利を行使せずに放棄した、ということになるわけだし、生命保険加入者の「命」(もしくは人生など)を買う権利を購入したのは生命保険会社ということになる。権利を行使するもしないも自由(買う側にしてみると)というのが先物取引とは異なるところか。もっとも権利を売る(履行義務を追う)側にしてみると、権利行使されたらそれを履行する義務をおう。オプション取引の怖さが想像できる内容ともなっている。
 ストックオプションがコールオプションだ、という会計基準の著述もこの本を読むとわかりやすいかもしれない。自己株式を市場価格よりも割安で購入できる権利がストックオプションだが、市場価格は変動する。市場の状況に応じてストックオプションを行使するもしないも権利を付与された従業員の側で、これはコールオプションを従業員が購入したのと同義だ。逆に企業はプットオプションを売ったわけだから、コールオプションが行使されれば今度はそれを履行する義務をおう。けっこう日常的にオプションと取引はおこなわれているが、それをオプションとして認識していないだけなのかもしれない。デリバティブと聞くとやや面倒、と思う人にもオススメの内容で、数学などはまったく出てこない内容になっている。

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