2012年2月4日土曜日

国語入試問題必勝法(講談社)

著者:清水義範 出版社:講談社 発行年:1990年 本体価格:420円
 ブックオフで100円で購入。読み出すと、なんだか懐かしい感じが…。1990年代に一度読んでいたからかもしれない。で、読み返すと非常に「懐かしい」。あらすじが懐かしいというよりも当時清水義範が取り組んでいたパスティーシュ小説というジャンルそのものがなつかしく、そういえば現在のライターの文章は非常にこなれている反面、癖がなく、このライターの文章は読めばすぐわかる、というほど個性が確立していない。明治時代の前半には、口語体あり文語体あり、あるいはその両者がいりまじった文体ありで、その完成は夏目漱石の登場を待つしかなかったらしいが、21世紀の日本語は非常に標準化されている。丸谷才一さんのパスティーシュといっても肝心の丸谷さんの文体そのものがなかなか日常的に読みなれるような環境ではなくなったため、今の10代がこの本を読んでも、なかなか素直に「面白い」とは感じ取れないのではないか。パスティーシュというジャンル、もしかすると現在書店を席捲しているビジネス本のジャンルでは、新たな地平が開けるかもしれないが、逆にビジネス書籍を読む読者層は本を読んで笑う…という経験に対するニーズがなさそうな予感。

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