2012年2月23日木曜日

なぜ若者は保守化するのか(東洋経済新報社)

著者:山田昌弘 出版社:東洋経済新報社 発行年:2009年 本体価格:1500円
 タイトルのつけ方はうまい。しかし中身は週刊東洋経済のコラムを集積したもので、けっして若者の保守について一貫した主張が展開されているわけではない。保守とは何か…というテーマはあるが、それは脇に置いておく。ちょうど昭和の高度経済成長期の時代に戻るといった感覚が「保守」(ということにしておけば)確かに保守の傾向はあるのかもしれない。ただそのあとのバブル景気や平成不況が「革新」なのかというと疑問だが。専業主婦を希望する女性や、終身雇用制度を期待する若者が増えているという傾向があるという。また男女の職場と家庭の住み分けについても賛成する比率が上昇傾向にあるというが、これってけっして本来の「保守」という意味ではない。おそらくは生活重視からすると、終身雇用制度が望ましい(ただ自分がずっと働くかどうかはわからない)、旦那は仕事して自分は家にいたい(ただそれよりずっといい仕事があれば働く)というダブルスタンダードの傾向があって、それがアンケート調査に適切に反映されていないだけではないか、と個人的には考える。そしてそうした疑問について反証がでるほど、この本では緻密に保守傾向について語られているわけではない。その一方で結婚したくないという男女の比率も増えているという。あれ。保守の傾向にあるというのに結婚についてはだいぶ革新的だ。ちょっと興味深いのが110ページにあるオリジナルの調査で「未婚男性の実際の収入」という統計。200万円以下が32.4%、200万円~400万円が44.2%、400万円~600万円が20。0%、600万円~800万円が3.5%、そして800万円以上が統計的には0っていう…。その一方で未婚女性の3人に1人以上は600万円以上を希望しているわけだから、それは未婚男女は増加するわけだ。
 でもこうしたミスマッチも未婚も元をたどれば「自己実現の罠」にひっかかった若者の若者たる所以の「わかげ」にすべて帰着するような。「生活重視」は「保守」とは違う概念だけれど、快適な生活を追い求めて結婚も就職も二次的に考えていく。そんな時代の雰囲気が各種の統計にでているのではないかとふと思う。あ、けっして著者に反論しているわけではなく、いろいろな大胆な仮説を提示していく著者の力量はさすが。

0 件のコメント: