2012年2月14日火曜日

とんかつの誕生(講談社)

著者:岡田哲 出版社:講談社 発行年:2000年 本体価格:1500円
 明治維新は表面的な変化だけが先行して「西欧」をおっかけた。現在では西欧文化と日本の伝統文化がいりまじって、さらに独特の「超日本」という状態にあるが、食生活も例外ではない。日本独自の「とんかつ」が生まれたプロセスを著者は綿密に検証。わき道にそれてアンパンやらカツどんなども検証してくれて、日本のカツカレーなどは海外ではなかなか食べられないメニューであることにあらためて気がつくという読後感が味わえる。一応明治維新までは、
1200年にわたり日本では肉食は禁止されていた(天武天皇の殺生禁断から)。薬として一部食べることはあったらしいが庶民の生活としては、やはり牛肉を食べるという文化がなかった。それが栄養の向上などをめざす維新政府の意向でひっくりかえる。パンについては南蛮貿易の影響ですでに日本には入っていたが、それが食生活にとりこまれようと試みが始まるのは、尊皇攘夷をめざす各藩が兵糧としてのパンを研究しはじめてからだ。牛なべが始まりそれが関西から関東に伝播する過程ですき焼きが誕生。それを福澤諭吉や仮名書魯文など文化人がさらに推奨していく。カツどんについては発明したのが早稲田高等学院の中西敬二郎さん(1921年)と氏名もその年号もはっきりしているのだから、牛肉が日本で食されたのはやはりつい最近のことなのだ。あたりまえのように食べているとんかつの歴史がこの本を読むだけで、その始まりからわかるようになる。とてつもない歴史の本である。

0 件のコメント: