2011年9月2日金曜日

消失 中(角川書店)

著者:高杉 良 出版社:角川書店 発行年:2010年 本体価格:857円
金融庁の支店の検査はとにかく厳格とのこと。まずはその検査を乗り切った主人公だが合併後の人事において、「グリーン化作戦」なる一方的な片方の銀行によるもう片方の銀行つぶしがおこなわれる。中巻では上巻の後を受けて、「合併後」の陰湿な世界が描かれ、おそらくは世界最大の自動車会社の子会社に、東海地方の銀行出身者がどんどん流れていく様子が描かれる。銀行のドンにもものおじせずに直言する主人公だが、それでも東京本部に常務執行取締役として復帰。そして進行する内部抗争に心をいたませるが、巨大企業はその一方にきった舵をなかなか切りなおそうとはしない。実際にさらに「その後」を知る現実の世界では、この架空の巨大銀行はさらに巨大な銀行に吸収されてしまうのだが…。


経済小説のジャンルだが、ここまでくると50代ビジネスパーソンの最後の意地の見せ所が満載といった感がある。あまり現実感のない20歳以上離れたカップルの艶話にもかなりページがさかれているのは、一種の「回春小説」か。上巻を読んだときには「え~~」という感じだが、中巻でだいぶそうした場面にも慣れてきた。それにしても、いろいろな血縁や地縁といったものもあるだろうに、合併前の勤務先で派閥抗争がおこなわれるというムラ社会そのものにやや唖然。

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