2011年9月28日水曜日

オレたちバブル入行組(文藝春秋)

著者:池井戸潤 出版社:文藝春秋 発行年:2007年(文庫版) 本体価格:657円(文庫版)
1980年代にKO大学から産業中央銀行に入行した4人組。時間は流れてバブルは崩壊し、入行した銀行も合併。さらには当初の夢もやぶれてそれぞれは若いときとは違う部署に配属されていた。そんなおり大阪の支店で融資課長とつとめていた半沢は貸付先の倒産により約5億円の債権回収を余儀なくされる…。かつてはわりと安定していた銀行だったが現在は統廃合や業務停止などもわりと耳にする金融機関。80年代と2000年代の20年間の時代の「違い」が如実に描かれている。全員が全員というわけではないがバブル時代の入行組のかなりの部分が片道出向や中途退職で夢破れ始めた時期を舞台にしている。物語の進行は「日常世界」⇒「危機の接近」(貸し倒れ)⇒「危機へのためらい」⇒「賢者との出会い」(同期との対話)⇒「仲間と敵」(支店長と同期)⇒…とジェームズ・キャンベルの「神話の法則」をなぞった展開へ。「鋼鉄の組織」のなかで主人公は孤軍奮闘するわけだが、実際にはここまで言っちゃう人間はいないのではないかと思う。ま、それがこの本の醍醐味かとも。直木賞受賞効果か2007年に発売されたこの文庫本も2011年版で第8刷。力のある作家の文庫本はいったん書店の棚から下げられてもまた平積みだ。

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