2011年9月18日日曜日

ローマ人の物語 42(新潮社)

著者:塩野七生 出版社:新潮社 発行年:2011年(文庫版) 本体価格:362円(文庫版)
実質的にローマ帝国が滅亡した410年を上巻で取り扱い、この中巻では形式的に滅亡した年とされる476年までを中心に取り扱う。ゲルマン民族が攻め込んできてローマ帝国が滅亡した…。ではゲルマン民族はいかにしてローマ帝国に侵入してきたのか。1つは宗教問題が遠因としてあげられている。ローマ帝国はカソリックだったが、ゲルマン民族のうちキリスト教に帰依した族は異端とされていたアリウス派キリスト教。さらには北アフリカでは、ドナートゥス派。さまざまな要因で北アフリカにもゲルマン民族のヴァンダル族がわたり、カソリックであるローマ人を追い払ってしまう。北アフリカはイタリア半島にとって穀物の供給地点であったが、その供給経路もたたれる。宗教問題が食糧問題にも発展していった。2つめは優秀な人材の使い捨て。ガリア地方の蛮族をおさえてきたアエティウスと北アフリカを統括してきたボニファトゥスが内戦をおこし、ボニファトゥスが死亡。優秀な人材を一人失うとともに、帝国皇帝も暗愚の時代が続く。第三はフン族のアッチラによる侵略。こうした形式的な要因はあっれど、もちろんローマ市民権を平等に与えるというシステムの改変による国防意識の欠落といった本質的な要因もある。476年の描写は1000年の歴史をもつ帝国の最後にしてはきわめてわびしい。

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