2011年9月29日木曜日

警官の条件(新潮社)

著者:佐々木譲 出版社:新潮社 発行年:2011年 本体価格:1900円
とにかく分厚い四六判の単行本だが、長いには長いなりの必然性がある。組織犯罪に独自の流儀で立ち向かう加賀谷刑事の違法すれすれの捜査と逮捕から物語が始まる。が、これは序曲で、その部下で上司の内偵をうけおっていた安城和也が実際の主人公となる。「警視庁」には三代目として入庁し、32歳で警部。そして組織犯罪にたちむかう刑事となるが、殉職した自分の父親とはまだ相容れないものを感じている。「行き場のない迷路」に入り込んだ主人公を出口へといざなうのは実際には、「転落した刑事」であるはずの加賀谷だった…という構図。いわば「スター・ウォーズ」でいえばダース・ベイダーとオビワンが同一人物に集結したのが加賀谷刑事といえるだろうか。ラストはもちろん「実質的には」ハッピーエンドで、ラストにいたって主人公は一人の成熟した警察官となる。ただし大きな犠牲を払いつつ。
警察内部の人間に丹念に取材しつつ、さらに想像力で不足した部分を補いリアリティも満載。2009~2010年ごろの薬物犯罪の検挙動向などもふんだんに物語に取り込まれている。警察もののミステリーもついにここまできたのか…という感慨も。

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