2011年9月19日月曜日

ローマ人の物語 43(新潮社)

著者:塩野七生 出版社:新潮社 発行年:2011年(文庫版) 本体価格:514円
最終巻ということで巻末には年表とコート紙に4色印刷を施した貨幣の写真が特集されている。ローマを物理的に滅亡させた西ゴート族だが、先住のローマ人とは共存を図る。しかし東ローマ帝国の軍隊派遣により、ローマ人と西ゴート族との軋轢は拡大。ローマ法の編纂で有名なユスティニアヌス帝によるもので、このゴート族との戦乱でイタリア半島は混乱に陥り、東ローマ帝国も衰退の一途をたどる。またローマでは水道は敵の侵入を招くため廃止され、農業生産の基地であったヴィラは荒れ果て、ローマ帝国のインフラが破壊されていく。そして東ローマ帝国の周辺でもイスラム化が進み、イタリア半島はロンゴバルト族に支配されていく。このころ日本では大化の改新の時代。ローマ帝国勃興のころにはまだ日本本州ではローマ帝国の文化は彼岸のかなただったのが、律令国家の根幹を備えていこうとする日本の息吹と地中海の混乱が興味深い。地中海が混乱すれば文化人などは当然東へ退避して、それが隋などに伝来していき、さらには日本へ…と考えるのはあまりにでかい話すぎるか。ただ、それほど現在の地中海周辺は混乱していたともいえる。著者は最後に「礼儀をつくして」ローマの歴史を見直すといった趣旨の文章を書いているが、このローマの成長の原因と衰退の歴史を文庫本でここまで執筆したエネルギーがすごい。そして現在もなお日本のそこかしこにみえるローマ帝国やキリスト教の影響が、世界の相互作用と歴史のすごさを感じさせる。

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