2011年9月18日日曜日

ローマ人の物語 41(新潮社)



著者:塩野七生 出版社:新潮社 発行年:2011年(文庫版) 本体価格:438円(文庫版)
白をトーンとした単行本の装丁も悪くはないが、この新潮社文庫におさめられている「ローマ人の物語」シリーズは、装丁がやはり他の文庫本と比較すると際立って上品。約1年ぶりに文庫化されたのは、「ローマ世界の終焉」。テオドシウス帝が死んだ後、東と西に帝国が分割される初期の時期を扱う。実際に西ローマ帝国の要として活躍したのは、「蛮族」の血をひく軍総司令官スティリコ。西ゴート族アラリックとの度重なる会戦、そして皇帝の疑惑を招いて処刑。西ローマ帝国の滅亡と教科書に記載されるのはこれより約70年後だが、よく映画化もしくは描写されるのは410年の西ゴート族によるローマ劫掠。この5日間の掠奪が1000年の帝国の歴史に事実上終止符をうつ。帝国が興隆しつつある時代には読者もまた気分が高揚してくるが、この上巻の最後には「消滅」の悲哀を読み取ることになる。が、「帝国の消滅」をここまで細密に描写され、それを読める機会もまたかなり少ない。歴史の教科書では数行ですまされるくだりに1冊がさかれている贅沢さ。片手で簡単に開けてどこでも読める文庫本に、ふと日本を重ねてみる…。

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