2010年11月15日月曜日

Cの福音(宝島社)

著者:楡周平 出版社:宝島社 発行年:1996年 本体価格:1456年(文庫本は宝島社と角川書店からそれぞれ発刊)
総合商社の社員の息子としてアメリカのミリタリースクールに通学後、ブラウン大学に進学。オールAの成績で前途洋洋だった朝倉恭介に両親の突然の死。朝倉はとある事件をきっかけに外資系名門企業や日本企業への就職ではなく、知人のマフィアを訪ねる。そしてそこでプレゼンした内容は、これまでだれも考えなかった日本の税関システムを利用したコカインの密輸方法だった…。「ラストワンマイル」も「再生巨流」もそうだったが、物流に関する知識が非常に緻密に描写されており、いわば物流ミステリーといった様相を呈している。おそらく著者は外資系の物流関係の会社にいたのではないかと推定されるが…。CYカーゴやCFYカーゴなどコンテナの種類などもさらっと物語に挿入されていて、物流に興味のある人には特にオススメのミステリー。六本木の台湾マフィアの様子などはやはり馳星周のほうがすさまじいバイオレンスだが、バイオレンス描写はあまり得意ではない印象も。むしろ淡々と「モノ」がアメリカから日本へ動いていく描写が怖い。薬物に関する描写もリアリティがあり、著者の相当な取材量がうかがわれる。「ちょっとしたきっかけで」コカインを始めた総合商社の若手社員がどんどん崩壊していく様子がこの本でいう「Cの福音」…。

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