2010年11月20日土曜日

イマイと申します(新潮社)

著者:日本テレビ「報道特捜プロジェクト」 出版社:新潮社 発行年:2008年 本体価格:400円
今ではさほどでもないが、いっとき「架空請求」事件があちこちで頻出していた。支払った覚えのない請求書が「はがき」などでやってきて「早く払え」というものである。「重要」などと印字されていたりもするが内容証明郵便というわけでもなく、それだけでは法的証拠にはならない。ただし民法では「債務の承認」という制度が用意されており、代金の一部でも弁済してしまえば、「債務を承認」したとみなされて、架空請求が本当の請求になってしまう。そこで悪徳業者はなんとしてでも「債務」の言質をとろうとあれこれ策を弄するのだが、そこにストレート勝負でのりこんでいったのが、この日本テレビのイマイ記者。「ガラをさらう」「腕を折る」という物騒な脅しにも負けず、正面から立ち向かっていく。ある事件ではオーストラリアの何某コールセンターとドイツの架空請求業者とのつながりも明らかにされるのだが、オーストラリアの金融機関はスイスの銀行以上に秘密性が高いとされている。こういうルポでオーストラリアが登場してくるのは偶然ではないだろう。いずれ「振り込め詐欺」についても形をかえたルポがでてくると思うが、金をだましとろうとする悪質業者と警察、そしてこういうジャーナリズムの予想もしない取り組みは、こうした書籍にまとめておくにふさわしい活動といえる。

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