2010年11月14日日曜日

ローマは一日にしてならず上巻・下巻(1・2巻)(新潮社)

著者:塩野七生 出版社:新潮社 発行年:2002年 本体価格:第1巻400円、第2巻438円
単行本のシリーズは途中まで読んでいたのだが、いかんせん場所をとるうえに重い。通勤電車で読むにはやはり文庫本が適している。ということで文庫版がでたのをきっかけに第1巻と第2巻を文庫本で読書。ローマ、都市国家の範囲をこえて帝国となりえたのはなぜか、ローマの基礎は最初の700年ほどに形成されるといった意味合いでいえばこの第1巻と第2巻は続く40巻までの歴史の「基礎」となる。トロイア戦争で逃げ延びた子孫がロムルスとしてローマ人となった説は「御伽噺」として塩野は面白く扱い、実際にはラテン諸民族の「はぐれもの」が最初ローマに集落を作ったのではないか、そしてそれは北のアルトリア人にとっては守りにくく、南のギリシア諸民族が形成した都市からすると海から離れすぎていたのではなかったかという仮説を提する。学者だとなかなか活字で思い切ったことを書くにはそれなりの証拠が必要とされるのだろうが、塩野の場合には小説という形でさまざまな仮説を大胆に著述する。そしてそれがおそらく学問の進歩を促すのだろうと思う。だれかが思い切った仮説をだし、実証証拠はあとからついてくるというのはまさしく「トロイア戦争」のシェリーマンそのものの生き様だ。ギリシアの文化がローマに流入してくる時代にはまだ早い。前3世紀まで、ポエニ戦争開始直前までの500年間をこの2冊できっちり学び、そして第3巻から地中海西部を支配下におくフェニキア人カタルゴとの戦いが始まる。

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