2010年11月17日水曜日

ハンニバル戦記 下巻(第5巻)(新潮社)

著者:塩野七生 出版社:新潮社 発行年:2002年 本体価格:400円
第二次ポエニ戦争からマケドニアとローマの戦い、そしてカルタゴのあっけない滅亡までのBC146年までが描写される。ローマの若き天才軍人スキピオもローマ帝国元老院のなかに敵を作り、隠遁生活へ、そしてハンニバルもまたカルタゴからシリア王国の宮仕えと場所を移していく。一方、ヘレニズム地方ではマケドニア王国とギリシア民族で形成するアエトリア同盟との争いが激化しつつあった。マケドニアを打ち負かしたローマだったが、その後ハンニバルのいるシリア王国との戦い、そしてエーゲ海の制海権を得る。元老院では大カトーが覇権を握り、そしてローマはマケドニアを滅亡させる。かくしてローマは「役者」をかえつつも、現在のスペイン、かつてのカタルゴ(アフリカ州)、マケドニア、旧ギリシア・アカイア同盟地域を傘下におさめ、シリア王国、エジプト王国と同盟関係に、アフリカのヌミディア王国とはより親密な関係を結ぶ。もはや敵はガリア人とトラキア人というヨーロッパ大陸北部だけになった。世界史はいわば敗北の歴史なのだが、ここまで成長したローマがその後ギリシア文化を吸収し、英雄を多数輩出し、いまなお現代に影響を及ぼしている「骨格」はこのBC146年ごろといえるのだろう。

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