2010年11月18日木曜日

猛禽の宴(角川書店)

著者:楡周平 出版社:角川書店 発行年:2008年(角川書店、文庫版) 本体価格:705円(角川書店、文庫版)
「Cの福音」で通関法制度を利用したコンテナの一部抜き替え方式で違法輸入のシステムを作り上げた朝倉恭介。台湾マフィアとの抗争はあったもののその後安定した収益を稼ぎ出していたが、ニューヨークで義理の父親といってもよいファルージオが、部下の陰謀とチャイニーズマフィア。ラティーアマフィアの抗争に巻き込まれる。イラク戦争で心と体に傷を負った元軍人と最後には立ち上がるが…。
この手の物語はやはり心に影を持ち、「孤高」のスタイルをつきとおす主人公がふさわしい。同じ「孤高」のスタイルでも「根が善人」では物語に華がなくなる。力と力の抗争に加えて頭脳戦争と「時の運」も登場人物の「その後」を左右する。冷戦終了後の混乱期を舞台にしているということもあり、空軍基地から流出した「フロッピーディスク」もまた物語に華を添える。いや、エンターテイメントは結局主役が「アクシデント」に趣き、そして成長して帰ってくるというパターンだとすると、この物語では朝倉恭介はアメリカ国内の戦地で、前作をしのぐ戦闘に打ち勝ち、しかもチームプレイもこなせるプレイヤーとして成長して最後に生きて帰ってくる。文庫の表紙は戦闘ヘリ「コブラ」。夜の空を飛ぶコブラがめざすその先にあるものは…。

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