2010年11月25日木曜日

ユリウス・カエサル ルビコン以前 中巻(第9巻)(新潮社)

著者:塩野七生 出版社:新潮社 発行年:2004年(文庫版) 本体価格:476円
紀元前60年から紀元前49年までのカエサル40歳から50歳までの十年を描く。上巻では「遅咲きの花」といった感のカエサルだが、この紀元前60年ごろから、エリートだったポンペイウスを猛速度で追いかけ始める。パトロンだったクラッススとともに三頭政治体制を組み、キケロや小カトーといった元老院派と対立しつつローマの国防と元老院打破のために走り回る。ローマの公職員がいかにふるまわなければならないかを定めた法律などは600年後の「ローマ法大全」(ユスティニアス帝)にも収められた。またガリア戦記を著し、ドーバー海峡を横断してブリタニアにもわたる。ライン河を越えてゲルマン民族やゲルマン民族と組むガリア人たちと始終戦争を続け、紀元前49年は終わる。カエサルがただの借金漬けで色男ではなかった…というのは現代だからこそわかるわけだが、ただ単に戦争に強いというだけでは、ローマより遠方の地にあって軍団を率いることはかなわなかったはず。ガリアの地図が頭に入っていたに違いないと著者が断定するくだりがあるが、このリーダシップと先見の明はひょっとして若いころの「読書」にあったのではないか…とも思う。ミステリー小説よりも面白いカエサルの一生。まだこの中巻にして50歳である。

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