2010年1月25日月曜日

新版 民主党の研究(平凡社)

著者:塩田潮 出版社:平凡社 発行年:2009年 本体価格:780円 評価:☆☆☆☆☆
 力作だ。民主党が結党されたのが1996年9月、そして西松建設事件で小沢一郎氏の秘書が逮捕されたのが2009年3月。この約15年間をこの新書はまとめてレポートし、自由民主党、民主党およびそのほかの政党関係者から取材するとともに、今後の「流れ」も予測できるようになっている。この新書が印刷されたころには、まさか陸山会の元会計担当者の国会議員が逮捕されるなどとは予想もつかなかったはずだが、小沢一郎氏の政治手法の過去をさぐり、さらにその小沢氏と一蓮托生の運命を選んだ鳩山首相や管財務大臣にはそれなりに過去に共有してきた歴史があることがわかる。政治理念は異なる三人だが、自由民主党とは異なる現代史をそれぞれが抱え込んでいるのだろう。
 民主党関係者からの取材が当然一番多く、中立的な著述がなされながらも「やや」民主党に甘く感じられるのは取材源の多さからしてやむをえないのかもしれない。数々のスキャンダルにみまわれながらも政権交代が起こったのは、小泉総理大臣が就任する2001年前からの既定路線だったような気がする。

政党としての基本理念がなかなか見えにくい民主党だが「地方分権」という方向性はどうも共通しているようだ。歳出の効率的配分というテーゼもそこから見えてくる。一方、自由民主党は構造改革路線が2010年初頭の現在では色あせていることもあり、基本理念で対抗できないのが難しい点か。また政策理念に強い若手がまだ十分に育っていないのも頭が痛い。たとえば民主党には前原国土交通大臣が次世代のリーダー候補として圧倒的な存在感をみせるが、自由民主党にはそれに相当する政治家が現段階ではまだ育っていないというのが難点だ。健全は保守系2大政党政治というからには自由民主党がこのまま衰退していくのも良くないことだろう。だが、この新書ほどドラマチックな15年を自由民主党はおくっておらず、小泉元首相の「個性」だけで生き延びてきたというのが対照的かもしれない。検察庁が小沢一郎氏に事情聴取をかけた今だからこそあらためて読み直してみたい一冊だ。

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