2010年1月24日日曜日

無痛(幻冬舎)

著者:久坂部羊 出版社:幻冬舎 発行年:2009年 本体価格:838円
 神戸で発生した一家惨殺殺人事件。とある一家惨殺事件を連想させる事件現場の描写が続くが、その謎解きに挑むのが外見から健康状態を見抜く名医為頼英介。そして臨床心理士の家族とその前の夫、そして自己処罰型の中学2年生の少女。刑法39条をめぐる連続殺人事件が最後の「一点」に焦点があってくる…。
 「痛み」は身体的な痛みと精神的な痛みの両方を含んでいる。冒頭の事件からラストまで一気に読み通してしまう面白さ。いや、もちろんよくありがちな過去に傷を持つ天才肌の名医が「探偵」として登場してくるのはこの手のサスペンスの定番だからそのワンパターンさは責められない。実際、こうした「痛み」がテーマの推理小説では「探偵」をどのキャラクターが演じるか、というのは大事な要素でもある。謎解きというよりも刑法39条をめぐる警官、医者、被害者、犯人の複雑な人間模様のミステリーといった感じか。
  

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