2010年1月3日日曜日

「Sカーブ」が不確実性を克服する(東急エージェンシー)

著者:セオドア・モディス 出版社:東急エージェンシー 発行年:2000年
本体価格:1,700円 評価:☆☆☆
 「ビジネス」や「経営」をS字カーブで分析していくという本。製品ライフサイクルは経営関係の書籍にはどれにも載っているが、それを物理学の観点から企業や個人の資質にまで適用していこうという内容。かなり複雑であるはずの企業の「生命」をざっくりきりとってしまっているのだが、その単純さが逆に「真実」を描き出すのかもしれない。導入期・成長期・成熟期・衰退期をそれぞれ春・夏・秋・冬といった季節性になぞらえ、官僚主義ですら夏や冬には好ましい組織体制として位置づけられる(特に夏はなにもしないでも売り上げが伸びていく時期なので組織としては内部統制そのほかの官僚制を整備する時期ということになる)。冬の時期には利益率が落ち込むがその分アイデアを生み出すのには適してると説明される。士気は低下するが創造性や革新性が必要とされる。これを個人の人生になぞらえると、おそらく自分は「秋」の時期(成熟期)。ライフサイクルでいえば製品交替の時期で、ベンチマーク、基本回帰、プロセスの革新、モデルチェンジという時期。春にまいた種を収穫する時期といえば聞こえはいいが、本書70ページでは「望まないものに悲劇的にはまりこむ」時期ということになる。悪化した状況を改善していくには、「なにを」ではなく、「どうやって」するべきか…が重要ということになる。生産工程の改善など「プロセスの再設計」の時期でもある。確かに「成熟期」になるともはや「何を」といっても、やれることは限定されているが、「いかにして」目の前の課題をこなしていくかというプロセスの改善はいくらでも図ることができる。シンプルなモデルだが、シンプルであるがゆえに、自分自身の「ライフサイクル」を分析して「次の一手」を考えるヒントをくれる本である。タイトルはいかめしいが、内容はきわめて読みやすく構成されている。ただし新刊書店ではなかなか入手しにくい本なのでセブンネットかamazonで購入するか、ブックオフなどの新古書店を探索するほうが購入しやすいだろう。

0 件のコメント: