2010年1月17日日曜日

創価学会の研究(講談社現代新書)

著者:玉野和志 出版社:講談社 発行年:2008年 本体価格:720円 
 「批判」でもなく「賞賛」でもないというこの本、社会学的な見地からアプローチして、高度経済成長期に飛躍的に信者を増やし、また現在にいたるまでに種々の方向修正を加えてきた教団および政党を含めた関連組織に言及する。この本を読むまでしらなかったのだが、地域の行事であるお神輿かつぎやお祭りにも参加が制限されている時代がつい最近まであったらしい。ただ地域活動の一環としてなら、別に「教義」にも触れないという解釈となり現在に至るとか。地域活動にはむしろかなり積極的に参加しているのかと思っていたが、実際には地域コミュニティに溶け込もうとしてきたのはつい最近とのこと(それまでせめてPTAぐらいしか参加できなかったようだ)。日本共産党との支持者の取り合い、そして自由民主党の支持者と公明党の支持者の微妙な「時代性」のずれと重なり合い。それが自公連立政権で象徴的に現れていた、という著者の指摘は興味深い。同じ商工業者でも一部は日本共産党支持者だが、だいたい都市部はこれまで自由民主党か公明党のいずれかの支持者で、どちらかといえば小規模零細企業に公明党の支持者が多かった印象がある。ただそれも所得水準の向上と地域コミュニティの活性化という目的のもとに微妙に重複してきたとなると、今後さらに劇的な支持者の増加というのは見込めないだろう。そこで…というその「…」のくだりはこの本の中で「再生産」という言葉で説明されている。
 微妙にマルクス主義的な分析と社会構造をタテにみたてているところなどが気になる。また文章のイキがかなり長いのも読みにくい。賞賛でもなく批判でもない、というわりには、わりと「批判」の部分が少ない分だけ、どうなのかな、という気もするが、2008年当時の日本の社会を切り取った新書ということで、記憶にとどめておくべき内容かもしれない。

0 件のコメント: