2010年1月4日月曜日

福祉を変える経営(日経BP出版センター)

著者:小倉昌男 出版社:日経BP出版センター 発行年:2003年 本体価格:1,300円 評価:☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 名経営者の名経営者たるゆえんが明らかにされるこの1冊。親から譲り受けた運送会社を宅配便大手に育て上げ、そして福祉財団の設立へと方向を向けた小倉昌男氏の経営理念がページに凝縮されている。経営をけっして「悪」と決め付けるのではなく、福祉のあり方をかえて働く人に喜びを与えようとする小倉昌男氏の意欲や理念。小倉昌男氏のファンが物流業関係者のみならずさまざまな業種で多い理由もよくわかる。障害者の雇用促進やノーマライゼーションに経営の手法を用いて月給1万円という社会福祉法人のありかたを変えていこうという試み。そしてこの本書の中でも財務数値をディスクローズしていくという大胆さ。ヤマト運輸の労働組合もこの財団法人にカンパを寄せているというが、連帯する労働者という枠組みの中に障碍者が入っているケースのほうが少なかったのだから、このヤマト運輸労働組合の態度(自主的にカンパというのがすばらしい)も高い評価をくだすべきだろう。
 顧客満足(消費者のニーズを満たす)のために、いかなる付加価値をつけていくべきか、経費についてはどう考えるべきか、サービスが先で利益は後という考え方など、この本は実務に立脚した立派なマネジメントの本でもある。2009年の6刷目を三省堂で購入したが、これからもずっと多くの人に読んで欲しい名著。

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