2007年9月30日日曜日

実践EQ人と組織を活かす原理

著者名;リチャード・ボヤツィス、アニー・マッキー 発行年(西暦);2006  出版社;日本経済新聞社  
 日本でベストセラーになったのはダニエル・ゴールドマンの「EQ]が5年前ほどだろうか。正直当時の「EQ]自体はそれほどわかりやすくもないし、実践的でもなかった。IQに対して人との共感能力などのEQという概念がある、という指摘がちょっと一般向けに宣伝された程度でそれをどのように活用していけばいいのか、あるいは活用していくためにEQをどのように育成するべきなのかといった具体的な視点やノウハウはなかったように思う。本書では具体的な企業のケーススタディなどもふんだんに紹介されており、リーダーシップや組織原理などについてかなり細かく丁寧に著述されており、もし巷にあるEQ関係でより具体的な内容を、ということであれば本書はやはりお勧めだろう。また生まれたての経営概念であるだけにさらに緻密な研究をへてよりソフィストケートされた書籍がこれから出版されることを切に希望。

不可能を可能にする最強の勉強法

著者名;吉田たかよし 発行年(西暦);2005  出版社;PHP文庫
う~ん…確かに最強の勉強法なのかもしれないがいまひとつ感情移入できないのは相性のせいかどうなのか…。「暗記用のメモ」作成や長い専門用語のリストラなどすでに自分自身が無意識に実行していたことも取り上げられているがそれでも共感できないという…
 「暗記用メモ」とはいっても、これは会議やあまり意識の集中を必要としないときに語呂合わせや暗記事項を一つにまとめたものに過ぎない。一定時間これを繰り返してぼんやりみているだけでも記憶はできる(ただし思考能力は身につかない)。長い専門用語のリストラは法律関係や情報処理関係では必須のスキルで、これをやらないと膨大な専門用語の羅列に苦しむことにはなる。で、おそらく参考になるとすれば論文用の「48手」という考え方で論文式の試験の前に48の論点整理と論述を頭に叩き込んでおくという方法。これならば確かに論文式の学習には役に立つが…。今後の展開がさらに微妙な著者のPHP文庫版という印象。

整理がうまい人の習慣術

著者名;三橋志津子 発行年(西暦);2005  出版社;河出書房新社
 自分自身が大量のメモやカード、切り抜きなどの整理に困っているというのもあるが、そうした情報をいかに生産性向上につなげていくか、というプロセスにはまだ試行錯誤の段階だ。おそらくパソコンとメモとそれぞれの特性を活用しつつ、スケジュールや情報の流れなどを一覧にできるようになれば一番効果的な整理方法ということになるのだろう。ただ賞味期限の切れた情報を思い切って捨てるという思想はもっと自分の場合、意識的に取り入れていく必要性がありそうだ。いくらファイルがやまほどあってもそれが活用できていないのでは、まったく意味がない。新書サイズだがアメリカの出版社で働いていた著者だけあってインプットからアウトプットまでの情報整理の流れが個人的にはかなりフィット。

リーダーのためのNLP心理学

著者名;菅谷新吾 発行年(西暦);2006  出版社;ソフトバンク・クリエイティブ  
 NLPという用語は使ってあるが内容的には自己啓発ものとさほど大きな変化はない。「質問」を通して新しい考え方を引き出し、変化の時代に柔軟に対応できる部下を養成するというのがリーダーの究極の役目とするとコーチングにしてもすでに相手の内部にある要素を自分自身に気づかせていくことが何より重要ということになる。そして自主的に目標設定をして行動へつながれば組織全体としては活性化するのは間違いない。とはいっても人間が目標達成に至るまでにはいわゆる「達成曲線」を描くため、長期的な視点で物事を考えていかないとおそらくこうした自己啓発は失敗する。細かいプロセス設定をして小さな成功体験をいかに積み上げていくのかが一つのポイントになるのだろう。一種の「メモリ」があれば成功体験の小さな積み重ねは容易になるとも言い換えられる。コミュニケーションスキルと概念スキルをテクニカルスキルよりもなによりも重視する筆者にとって本書の内容のほとんどが生産的なコミュニケーションの紹介になっていたのはカッツの分類から始まる点からして無理なからぬところかもしれない。刺激的な内容の文庫本だ。

情報整理術66

著者名 ;西村晃 発行年(西暦);1999  出版社;成美堂出版
 ポストイットをはじめとするメモの取捨選択や新聞の切り抜き、そして街角の会話などをすべて素材にして経済記事を書くというオリジナルな発想が素晴らしい。またメモについても一定期間で廃棄したり、テーマごとに並び替えたりといった工夫がなされ、「死んだ情報」や「陳腐化した情報」などへの選別をきわめてアナログに、しかし確実に行っているところが素晴らしいと思われる。
 また長期的目標のためにメモを取るだけでなく、急がない雑用のメモなども一回総覧できるようにしてメモの優先順位を決定していくというのも合理的な方法だ。メモは一種の記憶の補助単位であるわけだから、その格納場所さえしっかりしてれば、あとはメモはその分類にしたがって集積されていくことになる。入ってきた情報はだれにとっても同一だがそこから出される結果は、修正に修正を加えられて似てはいるかもしれないが、実は別のものになっている可能性が高いだろう(もし単一の作品に限定せじメモの整理を3つの作品になぞらえて作っていけば、もっとバリエーションが高まっていくに違いない。500円そこそこの自己啓発マニュアルだが、読み手の側の工夫でさらにいろいろな可能性を試すことができる内容である。

自分を変えたい人の心理学

著者名 ;和田秀樹 発行年(西暦);2006 出版社;新講社
 色々な不満をかかえつつも日常生活をすごす。しかしその最中でも「少しでも進歩したい」というにニーズにこたえてくれるのがこの本。いろいろな環境への不満はあるものの、一番不満なのは、与えられた状況や環境に埋もれてしまってそこから抜け出そうとしていない自分自身への不満だ、とする著者は、日々のランクアップで毎日の成長をまず目的とし、さらに実際に動くことを提唱する。「考え込んで考え込んでついに悟りに達することはまずありえません。一番多い立ち直りパターンは考えることに疲れてとにかく動いてみたときです」という言葉が重い。またやる気のなさの根源を日々の「変化のなさ」にもとめ、長く仕事ができる人は自分の持ち味をしっかり理解してそれに磨きをかけている人だともいう。努力と成果には一定のタイムラグがあるなど厳しい分析もめだつが、毎日少し筒の進歩を重ねたい人にとっては必読の書籍。

iPOD非公式マニュアル

著者名 ;英知出版 発行年(西暦);2006 出版社;英知出版
 第5世代前のIPODが中心だが、画像の取り込みや音楽の歌詞の取り込みなどIPODを楽しめるアイテムがひととおり記載されている。「非公式」ではあるが、実際にはこうした裏技を使って音楽や映画を楽しんでいる人は多いのではないだろうか。この本以外にも紹介されているダウンローダーなども試してみたが「携帯動画変換君」にまさるソフトウェアはなく…。一つの定番ソフトとして定着してるものにはやはりそれなりの内容があるものと思う。

頭は必ず良くなる

著者名 ;日垣隆 発行年(西暦);2006  出版社;WAC
 意味のない単語は反復して覚えるしかないなど池谷裕二さんや和田秀樹さんなどをゲストに迎えての学習効果をチェックした本。値段の割にはかなり使えるスキルが多く紹介されており、個人的には非常に納得できる対談集。ワック出版というのはあまり聴いたことがない会社なのだが相当によくできた本ではないかと思う。

3時間でわかるクラシック音楽入門

著者名 ;中川右介 発行年(西暦);2006 出版社;青春出版社
 新書サイズで、しかも「3時間でわかる」などと書かれているとどうしても内容を軽くみてしまうかもしれないが、雑誌に記事を書いたときのレコード会社の圧力や、チェリダビッケが来日コンサートをしたときのエピソードなど「音楽鑑賞教室」のあり方なども含めて音楽の歴史(バッハ以後からフルトベングラーまで)一気に解説されているというお得な感じの新書。どっきりするようなフレーズもあちこちにちりばめられており(クラシックに慣れ親しんでいるのは資産家が多いとか)、読んでいていろいろ面白いことは事実。産業革命やフランス革命により「市民」の誕生といったテーマにもふれられており、入門書としては破格の出来ではないだろうか。

知的生産の技術

著者名;梅棹忠夫 発行年(西暦);1986 出版社;岩波書店
 何度読んでも役に立つ古典というものがあるとすれば、やはりこの「知的生産の技術」だろう。1969年に発刊されて現在もなお、パソコンの時代になってもその技術のエッセンスはあちこちで活用されている。そしてまた自分自身もあらためてこの本を読んで、カード形式による「情報」や「知識」の整理、「あらゆる経験は進歩のもと」といったしびれるフレーズの集積を再認識する。80年代よりももしかするとパソコンによる情報の一元化管理が可能になった現在こそ再読されるべき名著といえるかもしれない。

新会社法これだけでいい

著者名 ;大田宗男 発行年(西暦);2006 出版社;三笠書房
 会社法はぜんぶで979条あるがそのうちの一部を切り取って文庫本で紹介。ただしその内容にはだいぶ商法時代からの名残のようなものも残存しており、商号の論点や自己株式の消却など商法の流れを大きくひきずった会社法入門の入門といったところか。2006年5月の発行なのでまだ法務省令などの分析もあまりすすんでいなかった時期ではなかったかと思う。ただ文庫本であれなんであれ、入門のこうした形式から会社法に興味をもっていくのはすごくいいことではあり…。もし改訂版を出してくれるのならば商法の残存部分を切り落としてもっと会社法独自の領域(第2章)をふくらました構成内容を希望したい。

秋山仁の数学渡世

著者名 ;秋山仁  発行年(西暦);1996  出版社;朝日新聞社
 寅さんを理想とする数学者秋山仁のエッセイ集。一部数学の話もでてくるが内容的には「教育論」ということになるのだろうか。巻末には、桃井かおり、都はるみ、壇ふみ、風吹ジュンなどの大女優陣との対談も収録。で、この秋山氏の教育論ってやっぱり一部の天才肌の人間には相当するが、大多数を占める「一般人」にはやはり無理な教育論ではないかと思う。人間の内発的動機で何の強制もなく、学習を楽しむということができればそれはもちろん理想的だが、学問の世界はとてつもなく奥が深い。学校の中間テストであれ、社会人の資格テストであれ、何らかの達成度を示す目標がないと、わけのわからない袋小路に入ってしまう可能性もある。なんだかんだといっても、一定の暗記は必要だし、テストも必要で、要はテストに受かることを目標としつつもそのプロセスを楽しみ、さらに別の目標達成をめざす…というようにプラスのサイクルを描けるかどうかが分かれ目だと思う。資格も偏差値もある意味ではすべて途中経過をはかる「ものさし」のようなもの。それは手段であって目標ではない、という位置づけさえできれば、別に暗記主義が悪いとも詰め込み主義が悪いとも個人的には思えない。

成功感性

著者名 ;佳川奈未 発行年(西暦);2006 出版社;ゴマブックス
 おそらくは女性読者を対象とした一種の「ミラクルハッピー」物語。内容的なことはさておいても出版業界の内幕みたいなものが著述されており、「実際に執筆する側」の心の動向などが参考になる。「頭ごなしの批判はだめ」「感謝の心を伝える」っていうのは昔は「そんなものかなあ」などと思っていたが、実際に会社に勤めてみると以心伝心ではなかなか思っていることの半分も伝わらない。感謝の心は「ありがとう」という一言で伝えるほうが確かにシンプル。そして多様な価値観の中では確かに頭ごなしの批判はもう禁じ手といってよい。
 執筆者と食事をとって出版計画をねるという編集部長や社長の態度に感心する。やはり本作りの基本は人と人のコミュニケーションだから表紙のモデルさんの選定にも心配りをする筆者やデザイナーの集団行動とプロ意識がすごい。「感性」の視点や論理はちょっと「違うかなあ」という気もするが、本作りという点では共感できる点がたくさんある。

整理学~忙しさからの解放~

著者名;加藤秀俊 発行年(西暦);1995  出版社;中央公論社
 いわば情報整理の名著とよばれている本。アイヌの口承文化からメモの重要性や「記憶の伝承」といった方向へテーマをもっていく格調の高さと文章の明晰さが素晴らしい。アナログ時代に執筆されたとは思えない情報整理の鋭さがあり、書類の規格化の重要性やカードによる情報の「視覚化」といった手法は非常に参考になる。最近流行の「見える化」というのもおそらくもともとはKJ法やこの「整理法」に由来するところが大きいだろうと思う。カードも実際に情報をいろいろ書き込んで、テーマごとに分別するということをやってみると、アイデアが確かにわいてくる。しかもこれはデジタル化された今も変わらない。結局、「考える」「発想する」のは人間なので、情報を詰め込んだHDDの前でいかにそれを組み立てていくのかは人間に「見える」ということが一番重要なのだと痛感させてくれる本。記録とはまさしく「記憶の物化」なのだ。

姫椿

著者名 ;浅田次郎 発行年(西暦);2003 出版社;文藝春秋
 「泣き」と「笑い」の名手とよばれる浅田次郎の短編集。主に「泣き」が中心だが「再会」という作品には一種のホラーのような「恐ろしさ」も。タイトルの「姫椿」は浅田次郎のかねてからの持論でもある「立ち直りの美学」がこめられた一編。不動産業を営んでいた高木は資金繰りにつまり、青山墓地付近で死のうとしてタクシーをおりたつ。そこにはまだ貧しい頃の自分を彷彿とさせる人々がまだ銭湯を中心にしっかり生きていた…ホラー短編のような「再会」は小田原駅が舞台。不倫の恋人と分かれて15年後、新幹線の中で九鬼はかねての恋人が幸せそうな人生を送っている様子をグリーン車で目撃する。そしてその後、京都方面に向かう新幹線の中でまたそれとは違う別の人間と再会をはたす…。「人生は偶然の集積」と書く浅田次郎は直木賞を受賞するまでの半生とはまた違う別の人生をもしかしてリアルに想像していたのかもしれない。ぞっとする、というのはちょっとした偶然で人生が180度違っている可能性をこの小説でリアルに表現された「怖さ」…

グッド・ラック

著者名 ;アレックス・ロビラ、フェルナンド・トリアス・デ・ベス 発行年(西暦); 2004  出版社;ポプラ社
 2004年に半年で45刷を重ねたベストセラーの赤表紙バージョン。もともとは緑の表紙だったが、冬を意識して赤い表紙のバージョンを出版したようだ。ポプラ社というと、「同族経営」に異をとなえたサラリーマン編集者がその後代表取締役となった出版界でも珍しい風通しの良さそうな児童文学専門の会社、というイメージが強いがこれは主にビジネスパーソン向けの一種の「自己啓発的な児童文学」。アーサー王伝説には必ず登場してくるマリーンがなぞなぞを出す。それに対応する対照的な二人の騎士の行動がストーリーになるのだが、なるほど大人に売れる理由もわかる。なにせ「生物学的に合理的」な行動を片方の騎士がとるので、我とわが身をふりかえるといろいろ反省すべき点が読んでいるうちにじわじわ滲み出してくるという構造…。作家と翻訳の腕もすごいが、これに目をつけた担当編集者の「感性」もすばらしい。「幸運のストーリーは偶然には訪れない」というちょっと残酷なフレーズも用意されていたりする。オカルト的な内容かと思っていたが、むしろ「科学的合理主義」に裏打ちされた「大人向け童話」と考えるべきなのだろう。

炊飯器とキーボード

著者名 ;岸本葉子 発行年(西暦);2001 出版社;講談社
 女流エッセイストのたくましい一年間の生活を独特の文章でつづる。「言い訳できぬミスにうちひしがれる」など日常の些細なことがこうして一冊の本となり、しかも男性読者の私にとっても面白いのだから、やはりエッセイストというのはちょっとやそっとじゃなれない職業なのだと思う。圧力鍋の講習会など御近所とのおつきあいもばっちしの筆者。今後の展開がさらに楽しみだ。

山中つよしのSONOKO式美肌ダイエット

著者名 ;山中つよし 発行年(西暦);2005  出版社;青春出版社
 ラジオのパーソナリティなどもつとめる山中つよしさんの主に女性向けの食事やダイエットの処方箋。塩分は意識して控えて油物はあまりとらず、そして駆るカルシウムは積極的にとる。となるとやはり魚介類や野菜、カルシウムといえば牛乳といったあたりはやはり体にいいようだ。タンパク質は一日70グラムが目安ということなので(アミノ酸にも分解されるので)毎日適度な補給が必要とのこと。また頭脳の主な栄養源はブドウ糖というのは前から知っていたので甘いものが必ずしもすべて悪いというわけでもなさそうだ。この手の本ももっと読んでおくべきなのだが、なかなかレジにはもって行きにくい…

文系のための使える理系思考術

著者名;和田秀樹 発行年(西暦);2007 出版社;PHP文庫
 エビデンス、根拠を重視してさらに数値的データを重視する。概算力や統計学の基礎を学び、さらに仮説を一定程度「実験」のように実行してみるという態度を推奨する。著者が前から推奨している「試行力」という概念もまたこの理系試行術の中に含まれるのだろう。
 情報をある程度そろえたら、それを体系的に理解して自分の中の知識とするとともにそれを整理・加工して、新たな創造物を作り上げる。言うのは簡単だがまずはあちこちに散乱している情報をある程度「規格化」してさらに、その組み合わせを合理的に考えていく手法がこれから求められる時代になるのだろう。そのためには最近よくいわれている「見える化」、つまり作業の進捗度は目標や課題設定などをグラフや図にまとめておくのが一番効果的のように思われる。

windows超高機能フリーウェア

著者名 ;サカサムック 発行年(西暦);2006 出版社;司書房
 DVD系統のフリーシェアでは明らかにDVDdecrypterが使いやすいがこの本にはトップで紹介。ただしISO系統の再生に使う場合のソフトウェアについてはいまひとつ。GOMPLAYERも使いやすい画像ソフトではないかと思う。ダウンロード系統のIrvineも個人的には使用はしているがいまひとつその便利さを実感したことがない。ダウンロードの裏技が若干紹介してあったのでそれを参考にしてもう一度挑戦する予定。携帯動画変換君については文句なし。操作性も機能も個人として使うのには充分だろう。ビジネスツールでは「使って住所録」、HDDメンテナンスでは「すっきりデフラグ」にやや興味あり。ドローソフトなどは今後アドビのフォトショップエレメントを購入する予定なのでそこでマルチメディアについては学習する予定。デジカメ画像管理の Irfanviewにはちょっと興味アリ。GIF画像のジューワというのが案外なくて困っていたのだがもしGIFまでビューワできるのであれば、インストールしたいところ。オープンオフィスなど簡単な文書ソフトや表計算ソフトなどは無料で使える時代に突入したので、今後、VISTAに搭載されているオフィス2007の使い心地などをユーザーから聞いてみてそれからVISTAに切り替えるという方法も当然あるだろうと思う。

霞町物語

著者名;浅田次郎 発行年(西暦);2000 出版社;講談社
 地上げなどがまだ始まる前の昭和の高度経済成長期の麻布周辺。おそらくはこうした青春群像を今の50代から60代前半は抱えていただのだろうなあと想像させてくれる筆の力はさすがに直木賞作家。でもちょっとこの世界に入れなかったのはどことなくやはりハイソサエティな感じが今のヒルズ族と通じるものがあるからかなあ…。恋に遊びにと必死に生きている十代後半の男の子の話としてはちょっと美化されすぎている気もする。とはいえ「老い」や「死」、そして父親から息子への「継承」といった日本人をなかせるツボも満載の短編集。文庫本で読む分にはまだいいのかも。

重大事件に学ぶ「危機管理」

著者名 ;佐々淳行 発行年(西暦);2004 出版社;文藝春秋
 危機管理という概念を世に広めたのはまさしくこの人。後藤田正晴という人がいかにすごい人だったのかはこの本を読むと非常によくわかる。カミソリといわれた内務省出身の天才ぶりがそのかつての部下のこの著書からうかがわれる。特に三宅島噴火時の采配ぶりの描写は圧巻だ。危機寸前にリーダーシップがとれる人間はこういう発想や行動原理をとるのかと感じた。著者自身の一種の「諧謔」というか「自慢話」というか、一種の「癖」がかいまみえるのにはちょっと辟易するが、時代が悪いときには「フォロー・ミー」景気がいいときには「アフター・ユー」がリーダーシップの原理原則ととく姿勢には共感できる。またメジャーなマスコミでは取り上げられることがなかった神戸の大震災のときの日本銀行員について「歴史を勉強していた男ゆえの手さばき」という章でかなりの分量でほめたたえている。日本銀行自体、リベラルな雰囲気で個人的にはそれほど悪いイメージがもともとない組織なのだが、すったもんだのすえにこの方は調査役として日本銀行内で昇進したところまで描写。良くも悪くも良識派と呼ばれる人間をつぶしにかかる組織よりはやはりかなりいい雰囲気の中央銀行なのではとかえって思ったりも。危機に陥る前にできることはないか、と現代に生きる人間に多種多様なエピソードで問題点を呈示。しゃれたフレーズと固い文章が魅力的な文庫本。読んで少なくとも損をすることはないだろう。

できる人の書斎術

著者名 ;西山昭彦・中塚千恵 発行年(西暦);2005  出版社;新潮社
 書斎作りのポイントを新書で紹介してくれている。最後のほうには一般論が述べられているのだが前半のビジネスパーソンや家庭の主婦の方々の書斎作成のノウハウのほうが面白い。和風の窓に板を一本かけてそこを書斎にしてウェブの運営やお手紙を書かれる場所にしている方など、「場所や気持ちの持ちよう」という部分と、照明や暖房や冷房の重要さも認識。たしかに気温で「やる気」が左右される部分は人間にとっては大きい。

困った上司、はた迷惑な部下~組織にはびこるパーソナリティ障害~

著者名 ;矢幡 洋 発行年(西暦);2007  出版社;PHP新書
 「自己愛性性格」…ア、このタイプの人がいると確かに組織ってうまくいかない…というような身近な会社の人間をいくつかのカテゴリーに分けて対策編までついているというお得な内容。「上司の場合は尊大な雰囲気、部下の場合には大口をたたいて自分の魅力をアピール」といった自己愛性性格の人。けっこう多いから困ってしまうのだが、たまにおめにかかる「サディズムタイプ」の人っていうのも確かに困り者で…。ただあんまり詳しく読後感などを記載できないのが残念ではあるが、「お役たち度」150パーセントの内容。著者は数々の病院などで苦労を重ねてきた心理カウンセラーで内容的には学術的な裏づけがあってのもの。

「新中流」の時代~ポスト階層分化社会を探る~

著者名;和田秀樹 発行年(西暦);2006 出版社;中央公論新社
 「一人の天才がいても総合力には勝てない」。テーマはこれに尽きるのだろう。ビル・ゲイツが一人いる組織よりも平凡な人間が結束した組織のほうが強かったりする。新中流階層をいかにして厚くしていくか、という方策とその効果を探った本。機会の平等はこれからますます増していくが、その分、生まれた家庭の所得や資産で階層が固定化し、ひいては社会が固定化してしまうというのを筆者はうれえているようだ。
 実際のところ家計の「固定費」はこれからさらに増す。まず所得税の定率減税は2007年から廃止。さらに所得税から住民税へ税源移譲が行われ、住民税の税率は10パーセントへ上昇。厚生年金保険料や健康保険料も軒並み上昇するが、健康保険料の標準報酬の上限は98万円から121万円にアップ。こうした固定費がかさめばかさむほど実は、可処分所得は減少していくため、消費構造としては、可処分所得が多い家計ほど消費量は多くなるが多くの家計にとっては、消費の減少要因となる。将来が不鮮明な場合には消費や投資は抑制するのが普通だろう。したがって、今後、大きな消費支出をともなう行動は普通の家計はとらなくなるはず。となるとやはり景気は一定レベルで抑制されることになる。
 大規模支出を控えるということは住宅消費支出も抑制されるだろう…ということに当然なる。公共投資や住宅開発が昔ほど景気に与える影響度が低くなったのは、ひとえに「購買層」が限定されてきたことによると思う。
 アメリカ型の市場主義が妙な形で定着した場合のことを想定すると、一握りの高い所得層の消費によってのみ支えられるいびつな日本社会の出現ということもあながちうがった見方ではないだろう。階層社会か中流社会か。2007年が分岐点になるのだとすれば、セーフティネットや税制の問題など「再チャレンジ」にふさわしいインフラがなされなければならないのだ、とこの本を読んで思う。

〈勝負脳〉の鍛え方

著者名 ;林成之 発行年(西暦);2006 出版社;講談社現代新書
 いろいろな節目節目には「ああ、勝負時だな」と思うことがある。そんなときに大事なのが「勝負脳」という一種のメンタルトレーニングの要素だ、というのが著者の主張で具体的なエピソードが満載。「意識の二構成理論」という用語で外意識と内意識の両方が人間にはあるという仮説を展開。バッターが実際にはみえるはずがない球を打てるのもイメージ記憶の一種と断定する。記憶と心は連動しているというもジュレータ理論も面白い。成功するイメージ記憶というのも「できるだけ陽気にふるまう、他人に好意的にふるまう、そうありたいと思っている自分になったつもりで行動する、悲観的なことは考えない…といった習慣付け」が大事とされているが、感覚的にも納得はできる。
①目的と目標を明確にする
②目標達成の具体的な方法を明らかにして実行する
③目的を達成するまでその実行を中止しない。
「相手の攻撃はチャンス」「相手の長所を打ち砕け」「相手の立場にたつ」、「運動知能も表現知能の一つ」といった非常に有用な理論とテクニカルな話が満載。

「仮説力」のすすめ

著者名 ;和田秀樹 発行年(西暦) ;2007 出版社;アスコム
 仮説の種になる発想のヒントをいかにつかむか、という書籍。周りを観察して、素朴な疑問を大事にし、なんでも自分の仕事に関係づけてみる。さらにいろいろな人の立場で物事をみてみるなど具体的なアイデアが満載。ただしこの立場をかえて物事をみる、というのが非常に難しいことではあるのだが。1つの問題に対して複数の解答を用意するなど現実的な対応というのは確かに大事なのだが、その訓練をいかにつんでいくのか、というのは難しい。情報を集めてもそれを実際に使って整理しなければ知識にならないというのは同感。というよりも「情報を整理」するだけでもかなりの「知識」が身につくというのは実は最近実感しているところ。文房具やノート、メモなどを場所を決めたり、情報の整理方法を考えたりといった工夫をするだけで、自分自身の行動原理がだいぶ改善されてくるのがわかる。情報を整理するのが第一段階で、その次が情報を加工するというアウトプットになるのだろう。このインプット・アウトプットの流れをいかにスムースにして仮説を立案していくか、検証していくかがポイントになるのだと思う。

問題な日本語

著者名 北原保雄編 発行年(西暦)2004 出版社 ;大修館書店
 どこかおかしい、何かおかしいという日本語の実際の使われ方を分析。個人的には「こと」と「事」という表記の統一が興味深い。漢字で「事」と書くことは夏目漱石などの作品にもみられるように珍しくはなかったようだが、当用漢字以後は、「事」と「こと」はかなり厳密に使い分けられるようになったとのこと。「修飾語」をかぶせる場合には特に「事」という漢字よりも「こと」と表記するべき…というコラムに「なるほど」と思った。実際文章を書くときに(特に正式な文章など)、「こと」「とき」「さい」といった何気ない用語の表記の統一でかなり悩むケースが多かったのだが「事」で悩むことはこれからなくなりそうな予感。

2007年9月29日土曜日

使える読書

著者名;斉藤孝 発行年(西暦);2006 出版社;朝日新聞社
 「概念化」と「引用探し」こそが読書の本髄を説くこの新書サイズでは斉藤孝氏独自の「引用」と「概念化」が紹介されている。必ずしもその概念化にひきずられる必要性はないと思うが、本というものから「一本の刀」を取り出すというたとえはわかりやすい。なにかしら役立つものとかイメージを膨らませるような本を捜し求めているわけで、実はウェブの情報収集では、「一本の刀」を取り出すという作業には向いていない部分がある。本当に何かを使えるようにするためには、どこかしら対象物に対して、「強い立場」に立つとともに、ここで「型」(スタイル)の確立を説く著者はまぎれもなく大人の読書方法をわかりやすく解説してくれる真のコーチ、教師といった感じ。

現代人のための脳鍛錬

著者名 ;川島隆太 発行年(西暦) ;2007 出版社;文藝春秋
 認知症の障害は早ければ40代、50代でもありうる。もちろんその治療は大事なことだが、その治療の前に予防はできないだろうか…という視点で本書は書かれている。単純な計算や漢字の書き取り、音読といった作業が脳を活性化させ、一種の予防になるという紹介と人間と動物の違いは前頭前野の発達の違い〈感情や感情の抑制など〉にあると指摘。身近な新聞やお料理といった材料をいかに認知症の予防に利用するのか、といった具体的なスキルも紹介されている。

Googleで困ったときの基本技・便利技

著者名;AYURA 発行年(西暦);2006 出版社;技術評論社
 複数のページを見比べたいときにはシフトキーを押すとか、検索オプション画面の使い方などの紹介が非常に便利。グーグルの使い方の本は結構出回っているが、使えそうであまり使えないスキルでページが埋まっているわりにはお値段が高いというケースもある中でわりと実践的で仕事にも使える内容で価格が880円は良心的だと思う。
 公式文書で検索するのであれば検索オプションで「go.jp」を打ち込んで統計資料を探し出すとか、ファイル形式で検索するとか、読み方がわからないケースでは一部だけカタカタ読みを追加するとか、ビジネス文書のテンプレートを探すとかこれだけでも相当に仕事が楽になる。テンプレートはまめに作成するのが、パソコンで仕事をする際の「基本」だがウェブから収集したテンプレートをさらに独自の加工をこらしてwordのテンプレートに追加しておけば、手紙や文書作成には相当楽になる。お勧め。

悪徳商法

著者名 ;大山真人 発行年(西暦);2003 出版社 ;文藝春秋  
 電話による勧誘の中でも恋人商法、資格商法、当選商法、自己啓発商法、携帯電話による悪徳商法などが紹介されている。ヤミ金融やクレジットカードの被害はわりと古典的だがキャッチレディとよばれる恋人商法は今でも、というよりもウェブ社会になるともっと趣向をこらしていくのではないかとも予想。「本人の意思にそむいた契約は無効」という判例があるのだが恋人商法の場合、こん判例の一文にてらしても犯罪性が立証しにくい。利用されるのはやはり出会い系サイトで、しかも相手を用心させないようなマニュアルまで相当に用意されているというから怖い。
 「自分だけは特別」と思い込む人間の心理的成熟度はとてつもなく低い。いずれもこれらの悪質商法は「あなただけ特別「自分だけ特別」と思わせる一種の演出に支えられている。個人的には、データ的統計的にみても特別にラッキーなことが自分にだけ発生することはない…とわきまえておくことではないかと思う。やっぱりラッキーは自分自身の努力の蓄積の上にしかないわけで。

「恋する力」を哲学する

著者名;梅香 彰 発行年(西暦);2004  
 アリストファネス、ソクラテス、プラトンからユング、フロイトの心理学を用いての村上春樹の「海辺のカフカ」の分析、アニマとアニムスに「永遠の幻像」があるとしつつ、いかにして心理的成長を遂げいくかという一種の解説書というよりも魂の物語。バタイユのエロティシズムについてもかなりわかりやすい解説がついていて、ニーチェ、キルケゴールなども「自分自身の人生を生きていく」というようなわかりやすい解説でこの本だけで一種の哲学入門書としても読める。「実存性」「愛の純度」など忘れかけそうなアイテムについてもこんこんとといていくれる。哲学も科学なのだがそれをかなり実践的な形で紹介してくれているところに著者の「親切さ」が満ち溢れている。

いちばんやさしいオブジェクト指向の本

著者名;井上樹   発行年(西暦);2007  
 Smakktaik とsimulaという古典的な言語の話は聞いたことがあるが、1970年代にすでにアラン・ケイが提唱していたのがこのオブジェクト指向。オブジェクトの方法論については多種多様でその表記方法だけ統一しようということで生まれたのがUML。ライブラリや開発環境、移植性の高さなどが脚光をあびて現在に至るまでの歴史について概説。さらに「ケーキとDVD」というエピソードを使って、オブジェクトとは「ある場面において個別に識別できる何か」という定義を披露して、オブジェクト指向とは「ある場面をオブジェクトの集まりとして現すこと」とする。オブジェクト同士のやりとりがメッセージで、オブジェクトとメッセージがこのオブジェクト指向の基本の2つというわかりやすい解説。オブジェクトがもっている特徴を「属性」そしてオブジェクトによって変化することを「状態」としてオブジェクトに一つのメッセージが与えられても必ずしも同じ結果がかえってくるわけではないことを説明。イベントによって「状態」は変化し、メッセージを受け取るとオブジェクトはメソッドを展開。構造化プログラミングの限界(システムの大規模化)からくるオブジェクト指向やカプセル化の必要性など受験テキストだけでは把握しにくい概念を新書サイズで見事に解説。読んでよかった買ってよかった名作。