2007年9月30日日曜日

重大事件に学ぶ「危機管理」

著者名 ;佐々淳行 発行年(西暦);2004 出版社;文藝春秋
 危機管理という概念を世に広めたのはまさしくこの人。後藤田正晴という人がいかにすごい人だったのかはこの本を読むと非常によくわかる。カミソリといわれた内務省出身の天才ぶりがそのかつての部下のこの著書からうかがわれる。特に三宅島噴火時の采配ぶりの描写は圧巻だ。危機寸前にリーダーシップがとれる人間はこういう発想や行動原理をとるのかと感じた。著者自身の一種の「諧謔」というか「自慢話」というか、一種の「癖」がかいまみえるのにはちょっと辟易するが、時代が悪いときには「フォロー・ミー」景気がいいときには「アフター・ユー」がリーダーシップの原理原則ととく姿勢には共感できる。またメジャーなマスコミでは取り上げられることがなかった神戸の大震災のときの日本銀行員について「歴史を勉強していた男ゆえの手さばき」という章でかなりの分量でほめたたえている。日本銀行自体、リベラルな雰囲気で個人的にはそれほど悪いイメージがもともとない組織なのだが、すったもんだのすえにこの方は調査役として日本銀行内で昇進したところまで描写。良くも悪くも良識派と呼ばれる人間をつぶしにかかる組織よりはやはりかなりいい雰囲気の中央銀行なのではとかえって思ったりも。危機に陥る前にできることはないか、と現代に生きる人間に多種多様なエピソードで問題点を呈示。しゃれたフレーズと固い文章が魅力的な文庫本。読んで少なくとも損をすることはないだろう。

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