2007年9月30日日曜日

姫椿

著者名 ;浅田次郎 発行年(西暦);2003 出版社;文藝春秋
 「泣き」と「笑い」の名手とよばれる浅田次郎の短編集。主に「泣き」が中心だが「再会」という作品には一種のホラーのような「恐ろしさ」も。タイトルの「姫椿」は浅田次郎のかねてからの持論でもある「立ち直りの美学」がこめられた一編。不動産業を営んでいた高木は資金繰りにつまり、青山墓地付近で死のうとしてタクシーをおりたつ。そこにはまだ貧しい頃の自分を彷彿とさせる人々がまだ銭湯を中心にしっかり生きていた…ホラー短編のような「再会」は小田原駅が舞台。不倫の恋人と分かれて15年後、新幹線の中で九鬼はかねての恋人が幸せそうな人生を送っている様子をグリーン車で目撃する。そしてその後、京都方面に向かう新幹線の中でまたそれとは違う別の人間と再会をはたす…。「人生は偶然の集積」と書く浅田次郎は直木賞を受賞するまでの半生とはまた違う別の人生をもしかしてリアルに想像していたのかもしれない。ぞっとする、というのはちょっとした偶然で人生が180度違っている可能性をこの小説でリアルに表現された「怖さ」…

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