2012年1月30日月曜日

スポーツを「視る」技術(講談社)

著者:二宮清純 出版社:講談社 発行年:2002年 本体価格:720円
 新書ブームと言われ続けてきたが、ほんの少しブームも緩和されてきた印象を受ける。新書サイズは読みやすい上に値段も手頃ということで、読者サイドからすると便利な時代だが、それにしてもここ数年は粗製濫造の印象も。ここいらで、一部の名作・佳作と多数の駄作の仕分けが必要なころかもしれない。で、この新書はあまり売れない部類の新書だったらしく、アマゾンで買い求めたにもかかわらず2002年初版のまま。9年以上も倉庫に眠っていたことになるが、それにしては内容は非常に濃い。今から10年も前の内容ではあるが、野茂英雄へのインタビューやエンゼルスの長谷川の分析など、プロ野球を分析する上では非常に興味深い内容。日本のスポーツ界が10年前に何をめざそうとして、そして2012年現在、何が達成できて、何が達成できなかったのが予算実績差異分析も可能となる内容だ。とりわけ著者の明晰かつリリカルな文章が印象的。「スポーツ」という題材で、他のスポーツライターと著者が差別化できている理由。それはおそらく構成の妙もさることながら、抑制の利いた名文が貫かれているせいではなかろうか。

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