2012年1月21日土曜日

司馬遼太郎全講演第3巻(朝日新聞出版)

著者:司馬遼太郎 出版社:朝日新聞出版 発行年:2003年 本体価格:660円
 解説は出久根達郎。日露戦争以降の小説がないといわれている司馬遼太郎だが、講演録を読んでいると奈良飛鳥の時代から、あるいは江戸時代や室町時代から「現代日本」をみつめていたことがわかる。平安時代から鎌倉時代の理解が難しい「不連続な部分」~公家の時代から武家の時代へ移動した端境期~も110ページ前後の司馬遼太郎の解説を読むとうっすらと想像がつくようになる。熊本(肥後)、新潟(高岡)、青森(南部)といった地域性の講演からはこの日本という国の多様さがうかびあがり、稲作をベトナムなどと論じるときには関東と関西の稲作の違いが浮かび上がる。そしてガンダーラ美術の由来はインドのゼロの発見とギリシアのアレキサンダーの部下との出会いにあり、現代日本語の共通の基礎に浄瑠璃や義太夫が浮かび上がる。目にみえる今の文化の「由来」「つながり」がこの講演録を通して目の前に浮かび上がるのだから、なるほど、司馬遼太郎氏の講演は、ある意味では小説よりも高い評価を受けるのも無理はない。第3巻では1985年から1988年の4年間の講演録を収録。

0 件のコメント: