2012年1月28日土曜日

司馬遼太郎全講演 4(朝日新聞出版)

著者:司馬遼太郎 出版社:朝日新聞出版 発行年:2003年 本体価格:660円
 現在「日本史」という科目は実質的には中学校と高等学校の一部の県を除く歴史科目の選択科目となっている。世界史は必修科目ではあるが、「暗記事項が多い」と受験生にはされており、受験科目として選択される例は意外に少ない。中学校の学習事項をベースに日本史で受験する受験生が多いのには、慣れ親しみやすいという理由が多いと推定される。その意味ではこの「司馬遼太郎全講演」は日本史を選択した受験生にとっても、読書の「効果の発現」が多いに期待できる内容だ。平安時代と鎌倉時代の差や、鎌倉時代の文化や宗教が現在に及ぼしている影響なども考察できる。またいささか複雑怪奇な幕末の歴史を理解するにもメリットがあるだろう(尊皇攘夷だったのに明治政府になると開国路線を進んだ理由などもおぼろげにうかびあがってくる)。明の時代に輸入した品目として書籍や絵画、禅宗などが多いというのも興味深い。江戸時代の商品経済の発達が現在の日本の流通のインフラになっているというのも面白いし、江戸時代に生み出された閉鎖的流通構造を解決するためにはどうしても江戸時代に一部立ち返らなければ解決が難しい問題があるということも、推定がつくようになる。

0 件のコメント: