2012年1月4日水曜日

狂った裁判官(幻冬舎)

著者:井上薫 出版社:幻冬舎 発行年:2007年 本体価格:720円
 タイトルはいささか過激だが、裁判官の「給与体系」や標準的な勤務時間、さらに人事査定の内情などがうかがえる興味深い内容となっている。著者は理学部卒業で裁判官に任官したというやや変わり者で、判決の「理由」欄に余計なコメントは必要なく、裁判員制度についても批判的なスタンスをとる。ある意味では合理主義ともいえるが、これについては別の見方もできそう。主文とそれ以外の理由については簡潔明瞭に書くというスタンスも当然ありうるが、それ以外に「いかにして主文にあるような結論にたどりついたか」という理由以外に情報提供機能というのもあってもよい。判例についてはもちろんほかの裁判官の1級資料ともなりうるが、それとて絶対的なものではないので、短く簡潔明瞭な判決文がそれだけでベストとも言い切れない気もする。また裁判員制度についても、いろいろな考え方はあろうが、ひとつの社会制度の実験としては比較的うまく機能しているのではないかと個人的には考えている。ともあれ、判決よりも和解を好む理由や、審理期日をなんども重ねる理由もなんとなく理解できる内容となっている。司法制度に批判的な側面はまた読者それぞれの考え方にもよろうが、漫画「家裁の人」とは別個に裁判所の裁判官の標準モデルを描写するには悪くない本だ。

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