2012年1月8日日曜日

シャドー81(早川書房)

著者:ルシアン・ネイハム 出版社:早川書房 発行年:2008年 本体価格:1,050円
 中学生の頃に一度読んだ記憶がある本だが、あらためて読み直し。昔は新潮社から文庫本が出版されていたが、版権移動で早川書房から現在刊行。ベトナム戦争の末期となり、戦争の現実と軍隊の組織形態に疑問をもつグラント大尉が途中まで主人公。いきなり空中飛行やら爆撃といった子供だましではなく、いかにして最新鋭の戦闘機を「目的地」まで移動させるかといったディテールに著述の大半があてられる。技術論としたらもうこのシャドー81が前提としていた技術水準を現在ははるかに超えているはずだが、それでもなお読み継がれているのは、「なぜこの結果にいたったのか」が時代設定とともにいまなお説得力を持つからではないか。人間はなんらかの組織に所属して生きているが、ある時点で別の組織もしくは行動原理に身を委ねるとした場合、どうやって「転機」を切り開くべきか、がよくわかる本。このハイテク・サスペンス小説は、別の視点からすると壮大な「転職物語」とも読み捉えることができそう。

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