2012年1月10日火曜日

司馬遼太郎全講演[1]

著者:司馬遼太郎 出版社:朝日新聞出版社 発行年:2003年 本体価格:660円
 「龍馬がいく」なども読んだが小説などは今ひとつ好きになれなかった司馬遼太郎。ただし、この講演録の第1巻は1ページから最終ページまで一気に読み通したくなる面白さ。1964年7月から1974年9月までの司馬遼太郎の講演がおさめられ、法然と親鸞、歴史小説家の視点など40歳当時の司馬遼太郎氏の小説や歴史に対する考え方が明らかにされている。なにせ司馬遼太郎氏は36歳で産経新聞大阪文化部長に就任したほどの切れ者。1964年ではまだ40歳だったが、浄土真宗や浄土宗について堂々とした講演を展開している。物事の原型に着目し、「禅は危険だ」と警告し、中国、朝鮮半島、日本の文化と文明の違いについて論じ、退屈だった「日本史」や「世界史」のかつての授業が嘘のようにつながってみえてくる。大学受験を控えた受験生にとっても、断片化した知識をデフラグするのに本書は役に立つだろう。特に貨幣経済、商品経済については室町時代に芽がめばえ、江戸時代に日本本州に根付いたとする説明を基盤にして大阪論を上乗せしていく構図が見事。

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