2010年6月5日土曜日

オフシーズン(扶桑社)

著者:ジャック・ケッチャム 出版社:扶桑社 発行年:2000年 本体価格:629円
 海外ミステリーの売れ方というのは素人にはわからない。日本国内で翻訳されて発行されたのが2000年で「隣の家の少女」が映画化されるとなった2010年に第5刷が発売されている…。かなり変わった小説であることは間違いなく、「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」など70年代末から80年代初頭にかけての一連のホラー映画の要素をかなり取り込んでいる。家の周囲を取り囲まれて脱出を図るという定番の図式だが、ゾンビ映画とはまた違う刹那的な展開で衝撃のラストへと物語は進む。米国で最初に出版したバランタイン社はあまりの衝撃の描写にかなり赤字をいれ、ラストにも変更を加えたが、日本の扶桑社のバージョンはオリジナルに近い展開になっている。気力と知力と体力で「自分が認知できない不可思議なもの」と戦う男女6人の集団だが一人また一人と「食べられて」いく。この作品がただのスプラッタ小説にとどまらずその後も読み継がれていったのは、底辺に「絶望」「不条理」といった予測不可能な世界観があったためではないか。名作という気はないし、読後感も悪いのだが、現実の世界には、救出される割合が6人中1人以下のケースだって当然ある。「季節はずれ」の観光地と行方不明の少女の間によこたわる年月はわずか数十年。携帯電話が存在しない1981年の青春が瓦解していく様子がせつない(このミステリーは携帯電話があれば正直成立しないのだ…)

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