2010年6月19日土曜日

名画で読み解くブルボン王朝12の物語(光文社)

著者:中野京子 出版社:講談社 発行年:2010年 本体価格:980円
 すでにハプスブルグ家の物語が発刊されているが、同時代にハプスブルグ家を覇権を争ったブルボン王朝の物語を絵画で読み解いていく。時系列にエピソードが並んでいるので、ヴァロワ王朝からフランス革命までの通史としても読めるほか、絵画のトーンがじょじょに変化していっているのもわかる。写真ではなく絵画ならではの時代の「空気」が漂っているのもわかる。ブルボン家のあ家系図が巻頭に掲載されているほか、巻末には画家のプロフィールや年表なども付属。受験勉強のテキストとしても使えるだろうし、やや混乱気味のフランス世界史を整理しておきたいという社会人にとってもいい書籍。さらには絵画の奥深さにも触れることができる。
 これまであまり注目していなかったアンヌ・ドートリッシュというブルボン王朝の隠れた女性(フェリペ4世の姉でマリー・ド・メディシスの政略結婚によってルイ13世に嫁いでくる)の存在も知る。三銃士にも登場するアンヌ・ドートリッシュだが、英国チャールズ1世がフランスにやってきたときに傍にいたのがバッキンガム公。このバッキンガム公とアンヌ・ドートリッシュの間には世界史的な「恋愛」があったとかなかったとか…。また優秀なリシュリュー、イタリア人マザランといった側近にも支えられ、フロンドの乱を乗り切ったあとは余計な権力闘争からも身をひいて静かな余生を暮らした…。やや激動の部分はもちろんあるにしても、大胆不敵なフランス朝廷を無事に乗り切れる精神の強さとやさしさを兼ね備えたルーベンス作の肖像画も掲載されている。

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