2010年6月19日土曜日

地下室の箱(扶桑社)

著者:ジャック・ケッチャム 出版社:扶桑社 発行年:2001年 本体価格:619円
 最近はまっているジャック・ケッチャム。どうしても「隣の家の少女」との抱き合わせ販売になっているが、実際にはまったく別のストーリー。しかも主人公は40代の女性で、中絶手術を受けにいこうとしたところを誘拐されるというシーンから始まる。
 これ…。もちろん好き嫌いが大きく分かれそうな小説だが、物語の底辺にどうしてもキリスト教批判みたいな低音がずっと奏でられているような気がする。「組織」という架空の「圧力」で誘拐者は被害者をだまそうとするのだが、この「組織」と「被害者」の関係は「最後の審判」と「信者」との関係にも似ている。ブラム・ストーカー最優秀中篇賞受賞作品だがけっして「長い」という感じではなく、むしろ短編に近いぐらいあっけなくストーリーは終了する。予定調和的に終わるこの物語はこれまでとはまた違うケッチャムの作品だが…。動機や必然性といったものとはまったく無縁で、しかも伏線も「種」もない珍しい鬼畜系のミステリー。

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