2010年6月19日土曜日

サラ金殲滅(宝島社)

著者:須田慎一郎 出版社:宝島社 発行年:2010年 本体価格:1400円
 2010年6月18日に総量規制を含めた完全施行となる改正貸金業法。市場原理からするとヤミ金融の利用者が増えそうな気もするが、著者はこれまでの多重債務者の現実をみるとこの改正貸金業法の施行は必要という立場にたつ。クレジットカードのリボルビング払いからじょじょに消費者金融の借入金が増加していく様子のルポから始まり、三菱UFJ銀行とアコムの関係、グレーゾーン金利の問題、旧富士銀行の「生活ローン」や全情連へのアクセス、アイフルの事業再生ADR、錦糸町界隈におけるギャンブル融資、過払い金返還請求訴訟とアイフルの子会社シティズの過払い金返還訴訟をめぐってだされたグレーゾーン金利完全無効の最高裁判決、N振興銀行をめぐる金融庁の検査妨害疑惑や個人ローン債権の買取、流通系カードのポイント制度の落とし穴など、過去の団地金融や金融の再編前の事件などから現在に至るまでの小口金融、個人金融の歴史と問題点を総まとめにしてくれている。個人的には「総量規制」がヤミ金融の発達を促すリスクは否定しきれないのでいいことばかりともいえないという考えだが、それでも一読して種々のエピソードと隠れたリンク(関連)に驚くばかり。個々の事件は知っていても、それが具体的にどういう関連で別の事件とつながっているのか、という視点は欠けていた。金融リテラシーとは、こういう本で展開されている個別の金融事件の底辺を見抜く力ともいえる。2010年の今だからこそオススメの1冊。なにより面白い。

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