2010年6月20日日曜日

「在日」としてのコリアン(講談社)

著者:原尻 英樹 出版社:講談社 発行年:1998年 本体価格:700円
 「三国人」というのが戦勝国でもなく敗戦国でもなく「植民地から編入された日本人」という意味である…。それに気がついたのは実は最近で、「三国人」という用語に差別的な意味合いをかぎとったからだが、1945年当時の在日韓国・挑戦人の扱いについては日本国政府も連合国もかなり頭を悩ませたようだ。戦後まもないころには日本共産党との結びつきもあったようだが、これがかえって事態を悪化させてしまったように思う。できうるかぎりかつての植民地、戦後独立した韓国・朝鮮にすっきり戻せるような国際情勢であればよかったのだが、朝鮮戦争をはさんでかえって在日に対する状況は複雑化していく。「文化をすてて日本に帰化しろ」というのも簡単だし、「文化を捨てないのであれば帰れ」というのも簡単だが、簡単な議論は複雑な現実の前にはまるっきり「空議論」となってしまう。その一方で在日と日本人との結婚も続いているが、これ、実は問題の解決にはなっていないことを著者は論じる。実際、成人してから親の片方が在日で片方が日本人というケースの場合、アイデンティティをどこにもとめるのか…という苦境に陥った知人がいる。第三者があれこれいえない個人の問題だが本当に難しい問題だ。左翼的でもなく、かといって国粋主義的でもない現実の存在としての「在日」を語る新書。「嫌韓流」シリーズとあわせて読むと、また両者それぞれが抱える難しさもみえてくる。「左」とか「右」とかの問題ではなく、これ、「生活観」とか「故郷」とかもっと人間くさいものが根底にありそうだ。

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