2010年6月6日日曜日

襲撃者の夜(扶桑社)

著者:ジャック・ケッチャム 出版社:扶桑社 発行年:2007年 本体価格:762円
 「オフシーズン」の11年後の続編。1992年をむかえ、また再発する謎の殺人事件や傷害事件…。前作と同様に「自宅に迎え入れたばかりに発生する悲劇」の再現は、ひょっとすると「招きいれられないと中に入れない吸血鬼」と同じ源の神話だろうか。「襲撃者」は実は続々と増えていって、最後には登場人物のほとんどが何らかの形で「襲撃」するという形に。原題は「offspring」。前作の「襲撃者」の末裔が異なるパターンで増殖して意図せずに11年前の惨劇が起きた場所に舞い戻ってくる。独特の神話を頭の中に宿しつつ…。B級ホラーといって切り捨てることができないのは、やはり8歳の少年が、異常な状態のなかで「襲撃者」とは異なる形で「家族」を再現しようとしていく成長の過程がみられるからだろうか。あるいは、前作から11歳年老いた元警察官ジョージ・ピータースの正義感にうたれるからだろうか。その二人も倫理枠にとらわれないジャック・ケッチャムによっていつなんどき不条理な偶然で物語から排除されるかはわからないという不安定さの中、この作品のなかで必死に「倫理的に」動こうとするのだが…。「オフシーズン」より劣るという声もあるが、「オフシーズン」あっての期待できる続編。互いに敵どおしであるはずの「ウーマン」と「カウ」が最後は「対」になって高い場所から回転しつつ落下していく描写と「落下感覚」がすばらしい。

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