2010年6月20日日曜日

歌舞伎町・ヤバさの真相(文藝春秋)

著者:溝口敦 出版社:文藝春秋 発行年:2009年 本体価格:770円
 江戸時代から鉄砲組の宿舎がおかれ、武力とかかわりのある土地柄であったことから、さらにその後、歌舞伎座誘致や各種組織暴力団の抗争の歴史をへて現在に至るまでの流れを圧縮して紹介。歴史と地図の変遷から、この街が終始暴力という危険と「危なさの中の快楽」に彩られてきたことがわかる。そして新しい東京の街が歌舞伎町から秋葉原に移行しつつある現状も紹介されている。やはりこの本でも三国人の果たした役割について言及されているのだが、中心部からはじきだされてアイデンティティを故郷にもとめることができなくなった人間の一部はこうしたアウトローの世界に足を踏み入れてのしあがっていくしかなかったのかもしれない。そしてそうしたリスキーな匂いにつられて集まる人々もいる…。そして東声会とキャノン機関との結びつき…。この街の歴史は江戸時代から現在に至るまで脈々とつながっているが、権利関係の乱れた土地や建物と大幅立替も出来ていない雑居ビルの集積。ネオン街の下側には消防法など無視されたあれはてた雑居ビル群がむらがるように立っているイメージが残る。最終的には著者はこの街に「新しい未来」を見出すことはできなかったようなのだが、実は新宿にいっても歌舞伎町にはもはや一歩も足を踏み入れない私も同じ未来像を予想する…。

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