2010年6月9日水曜日

嫌韓流(普遊舎)

著者:山野車輪 出版社:普遊舎 発行年:2005年 本体価格:952円
 あれほど話題になったこのマンガ、名前は知っていたが実際に読むのは初めてだ。タイトルが過激な割には、「なるほど」と思う部分も多々あり、日韓基本条約をめぐる諸議論についてはむしろかなりまっとうな論理を展開している。「?」がつくのはむしろ文化論だが、これは条約や法律が客観的に見れるのに対して、文化論はやはりよってたつ立場によって見え方がぜんぜん異なる。いわゆる「プロ市民」は感情的にはかなり私も嫌いな連中だが、かといって全員が全員漫画に描かれているような悪質なタイプではない。純粋に「プロ」として市民活動に準じている方々もいらっしゃるわけで、「アンチ」であればなんでもかんでも「陰湿」なイメージでとらえるのもどうかな、と。
 「反日」と「嫌韓」。合い受け入れないこの両国だが北朝鮮という脅威の前には実は連帯していかないとたちいかない部分もある。またヨーロッパ経済やアメリカ経済(NAFTAなど)、地域保護主義が台頭しつつある現在、足元のアジアでまたまたまた決まりきった争いを繰り返すことにどれだけの意義があるのかは不明。こういうマンガに思い入れをいれる世代って結局、昭和の世代、特に高度経済成長期にかかわりのある世代で、平成生まれの世代にとってはあまりシンパシーの沸かない話のような気もする。これは日本国内の世代間格差の問題にもつながるが…。おそらくバブル経済の時代に思春期を過ごした現在の35歳~45歳の世代と22歳~34歳の世代とでは国際問題やアジア論など各種の論点でズレがでてきているだろう。「嫌昭和世代」みたいなマンガが今後日本国内で出てくる可能性もあるのではないかと個人的には思っている。「好き」も「嫌い」も実は重層的な構図になっており、韓国内部でも「あんまし反日反日でもりあげんなよ」という声もあれば、日本国内でも「韓国や中国との外交関係を良好にしないと貿易収支の黒字が稼げないだろ」という声もあるだろう。ま、いろいろな意味で議論をかもし出していくのにはいい作品だ。ただここに展開されているような議論、別に目新しくもない…というのが唯一最大の弱点か。

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